2006 Fiscal Year Annual Research Report
東欧・バルカンの民族問題と欧州安全保障体制に関する研究
Project/Area Number |
16530110
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 教授 (10248817)
|
Keywords | SAP / IPA / ロシア系住民 / モンテネグロの独立 / コソヴォ問題 / ボスニア-ヘルツェゴヴィナ / 凍結された紛争 / トランシルヴァニア |
Research Abstract |
EUに加盟したエストニア、ラトヴィア、ルーマニアは、民族問題を解決して加盟したはずであったが、いまだに民族問題がくすぶり続けている。エストニアの首都タリンではロシア系住民による暴動が起き、ルーマニアのトランシルヴァニアでは自治要求運動が展開されている。これらのケースは、EU加盟が民族問題の消滅に繋がるとする考えに疑問を投げかけるものである。なかでも、後者の例は、EUに加盟すれば国境がなくなりディアスポラ間の行き来が自由になるため民族問題は消滅する、との考えに修正を迫るものである。 他方、1996年に開始されたEUの対西バルカン政策は、1999年から安定連合プロセス(SAP)として着々と進められ、2006年にはそれまでの5つの支援プログラムを統合する形で「加盟前支援手段」(IPA)が導入された。2007〜2013年におよそ115億ユーロのIPAが予定されている。 かかるEUの関与の効果として、クロアチアはEUと加盟交渉を開始するまでとなり、マケドニアもEU加盟候補国家として認定されるに至った。また、アルバニアは安定連合条約に調印し、ボスニア-ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、セルビアは同条約締結に向けEUと交渉中である。コソヴォも法的地位の問題が解決すれば、SAPに加わると考えられている。さらに、モンテネグロも、EUの影響下において、平和里に独立を達成することができた。 しかしながら、問題は山積している。第一は、コソヴォ問題は如何なる最終解決を見るか、第二は同問題のマケドニア、アルバニア、さらにはボスニア-ヘルツェゴヴィナへの波及、なかんずくボスニア憲法は修正されることになるのか、第三は、コソヴォ問題が旧ソ連地域の「凍結された紛争」に及ぼす影響である。バルカン民族問題は、これから正念場を迎える
|
Research Products
(3 results)