2004 Fiscal Year Annual Research Report
非同盟の中国式孤立主義から集団安保主義へ-中国外交の根本転換の研究(1990年代)-
Project/Area Number |
16530111
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
趙 宏偉 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (40265773)
|
Keywords | 江沢民 / 融合と相克 / 非同盟と同盟 / 新安全観 / 上海協力機構 / 中国・アセアン共同体 / 東アジア共同体 / 東北アジア集団安全保障 |
Research Abstract |
初年度として、中国の外交政策大転換の決定過程を詳細に把握することに努めた。平成16年7月まで、首都圏、近畿、九州を中心に国際関係、中国外交の研究者と研究交流を行い、8月に中国上海で現地の研究者と交流した。10月3日、日本現代中国学会年度学術大会で共通論題の報告者として年度前半の研究成果を「東アジア地域間の融合と相克における中国の外交」という題で発表した。17年2月7日から3月29日まで中国北京に滞在して現地の研究者との交流、資料収集、政策決定者、政策立案者へのインタビューを行った。3月に文献研究の成果として「現代中国の国際認識の基本形の形成-現代中国以前の基本文献を読み解く-」を『法政大学キャリアデザイン学部紀要』第2号に発表した。 中国の外交政策大転換は、1994年秋、江沢民共産党総書記兼国家主席が〓小平より全権力の委譲を受けた直後から、江沢民のリーダーシップの下で始められたと考えられる。江沢民は新たな外交理念として「新安全観」を打ち出していった。この「新安全観」は1997年3月のARF(アセアン地域フォーラム)の初会合の席で中国外務省の公式発言として打ち出されたのであるが、江沢民本人はその1ヵ月後の4月23日にロシア国会での演説の中ではじめて言及し、かつ1年前に発足された中露と中亜3カ国からなる「上海ファイブ」という多国間協力組織の創立をその成功例として取り上げた。上海ファイブは中国がはじめて自らのリーダーシップを発揮して創立した多国間同盟組織である。その成立過程を時系列で追っていくと、その成立の1年余り前は、ちょうど江沢民が〓小平より全権力の委譲を受けた時期、即ち1994年秋以降の時期に当たる。江沢民はほぼこの時期から「新安全観」の外交理念の創出、その初めての外交実践としての「上海ファイブ」の創立を取り組みはじめたと思われる。困難に満ちた駆け引き、根回し、合従連衡…一連の外交努力をこなし、さまざまな思惑を抱く5カ国を1年余りのうちに1つにまとめることに成功した。そしてその後、今日に至って中国のリーダーシップの下で上海ファイブは、6カ国からなる「上海協力機構」に発展し、憲章と常設機関(北京)を持つ、政治、軍事、経済、文化など各分野にわたる同盟として発展しつつある。中国は続いて中国・アセアン共同体、並びに日韓を含めての東アジア共同体の創出を積極的に取り組み、さらに北朝鮮核問題の取り組みを梃子に6カ国会談を主催しながらその恒常化を通して東北アジア集団安全保障組織を創出することに努めている。 中国の外交政策は1990年代半ばより〓小平時代までの非同盟政策から同盟政策へと大きく転換したわけである。
|
Research Products
(1 results)