2004 Fiscal Year Annual Research Report
南北貿易における資源環境政策と動学的貿易利易の研究
Project/Area Number |
16530118
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 博史 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (50118006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 誠一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70047489)
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Keywords | 再生可能資源 / 資本蓄積 / 持続可能性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、環境資源を利用して作られる製品の輸出国による貿易政策が、環境保全におよぼす影響について主に貿易パターンの決定と要素賦存比率の関係との関連から動学モデルを用いて分析することであるが、初年度はまず、動学分析の基礎となる資源経済モデルの構築と資本蓄積過程の分析を行った。 1.再生可能資源の採取以外に産業を持たない経済が、物的資本の蓄積をつうじて生産能力を高め、資源採取からあがる収益だけにたよる場合に比べて、資源を移用して作られた製品の販売量と、資源量および資本量の長期的な行方を分析した。具体的には、採取された再生可能資源と物的資本を使って作られた製品の一部を市場で販売し、残りを資本蓄積のための投資に回している国を考え、資源の保有者が市場での製品販売収益から資源採取の費用を引いた利潤の割引現在価値を最大にするように、各時点での採取量と販売量をコントロールするという最適化問題を考えた。結果として、この経済には、定常状態が存在することを証明することができた。その特徴は、各期の最適資源採取量は資源のその期の再生量に等しく、各期の製品販売量はその期の製品生産量に等しくなるというものである。さらに、資源と製品の生産技術に不確実性を導入して分析を拡張した。結果は、不確実性のために、最適な採取量、販売量の時間経路は一般的には、単調ではなく、資源および資本ストックの変化に合わせて増減することになるが、一定の条件のもとで、この経済は不確実性が介在しない場合に比べてより慎重な資源・経済運営を行うことが証明できた。 2.上記1のモデルで導入された不確実性は資源ストックが時間の経過において連続的に変化するようなタイプのものであったが、資源ストックの変化はある時点で不連続なジャンプを示すと考えるほうがより現実的であるかも知れない。原油のような枯渇性資源の採掘可能量は、かつては30年しかもたないと考えられたが、その後の確認埋蔵量はその予想を覆した。また、新たな油脈の発見だけではなく、既存の油田が地下水などの浸潤により当初の資源利用可能量の減少をもたらす可能性もある。いずれも、ある程度の時間の経過の後に確認できる事象である。よって、上記1のモデルをジャンプ・プロセスを含んだものに拡張することには大きな意義がある。今年度の研究では、ポワソン過程を導入して、各種の経済変数の最適経路がジャンプの影響をどのように受けるかを分析した。ただし、分析の都合上、目的関数は資源保有者の製品販売利潤ではなく、資源経済全体の消費の効用水準の割引現在価値にした。結果として、消費経路は資本ストックの線形関数、資源採取量は資源ストックの線形関数になり、両者は互いに独立に決定されることがわかった。
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Research Products
(2 results)