2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢坂 雅充 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (90191098)
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Keywords | 酪農 / 乳業 / 国際化 / 不足払い制度 / 安全・安心対策 / トレーサビリティ / 補給金 / 乳製品貿易 |
Research Abstract |
WTOの農業交渉ドーハラウンドがいつどのような内容で合意されるかはわからないものの、着実に関税の引き下げ、国内農業保護の縮減、輸出補助の削減が進むことになる。不足払い制度のもとで800万トンあまりの生乳生産を維持してきた酪農、さらに安定的な原料乳供給などに支えられて発展してきた乳業も、さらに不足払い制度をはじめとする酪農乳業政策も国際市場による影響を強く意識せざるをえなくなっていく。 そこで平成16年度は、2つの視点から日本の酪農乳業政策の研究を行った。 一つは、加工原料乳にたいする不足払い制度の歴史的な展開をふまえて、その基本的な機能を再検討する作業である。とくに平成12年の不足払い制度改正が酪農乳業にどのような変化をもたらそうとして、どこまでそれが現実のものとなったのかという点に焦点を当てて、今日の酪農乳業政策の課題を析出しようとした。もっともこの作業はまだ充分に進展していない。暫定的な研究メモを公刊したにとどまっている。 二つは、牛乳・乳製品の安全・安心対策における日本および乳製品輸出国との比較をとおして、乳製品市場の国際化の課題を検討する作業である。まず日本の生乳および牛乳・乳製品のトレーサビリティ・システムや農場HACCPへの対応をとりまとめた。日本では業界が検討中の課題でもあり、むしろその取り組み方について整理することになった。その後、オーストラリア、ニュージーランドで同様の論点に関して乳業メーカーや連邦政府などに聞き取り調査を行った。乳製品輸出国では世界各国の不特定多数の消費者を念頭において輸出市場の安定的に維持していく必要があり、ISO、HACCP、トレーサビリティ・システムへの関心は高い。国際標準をいち早くクリアすることによって、ユーザーの信頼を得ようとしているといえよう。その結果、乳製品輸入国の日本との意識の差はかなり開きつつあり、トレーサビリティの確立などは急速に整備されている。消費者が「目の前」にいる日本では、契約取引や顔の見える関係に依存しがちであり、製品の安全・安心対策が後手に回ってしまうおそれがある。
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Research Products
(7 results)