2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530161
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60203874)
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Keywords | 面限汚染 / 農薬汚染 / 最適税率 / 次善税率 / 注意 |
Research Abstract |
今年度は、水質汚染に焦点を当て研究を行った。水質汚染には、点源と面源の汚染があるが、点源の汚染は政策的に、経済的手段・規制ともに扱いやすい。これに対して、面源からの汚染は、汚染量や排出者とも特定しにくく、政策的対応が容易ではない。とりわけ、農薬使用による汚染などは、農薬使用量だけではなく、使用する際の「注意水準」(care)にも依存する。このため、農薬汚染の制御はより多くの問題を含むことになる。「注意」を最適水準に誘導することはとりわけ困難であるからである。本研究では、注意水準はモニター不可能という前提の下で、次善の農薬税を求めた。これによると、次のような結論が得られている。 1.次善の農薬税は、農薬の限界被害だけではなく、次の二つにも依存する。一つは、被害の無差別曲線上での農薬と注意の弾力性の大きさ、二つ目は、生産者の利潤最大化における注意水準の農薬使用に対する変化率である。 2.一般には、生産関数、被害関数の形によって、次善の税率は、最適税率より高くなることも低くなることもある。また、税率が負、したがって補助金を与えることが次善である可能性も出てくる。研究では、どのような条件の下で、これらが明確に言えるかを確認した。とりわけ、これらの関数を特定化することで、最適税率と次善税率の比較を明示的に行った。 今後、次善の被害の大きさについても、最適における被害の大きさと比較したい。上の結論ととりまとめて、論文として公刊する予定である。
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