2004 Fiscal Year Annual Research Report
中国の上場企業におけるマネジメント・バイアウト(MBO)に関する研究
Project/Area Number |
16530170
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
黄 孝春 弘前大学, 人文学部, 助教授 (10234684)
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Keywords | 経営者支配 / 国有企業改革 / マネジメント・バイアウト / 流通株 / 非流通株 / 株式市場の分断構造 / 国有資産の流失 |
Research Abstract |
1980年代初期に始まる中国の国有企業改革は1990年代前期を境に経営自主権の拡大と所有権の再編という二つの段階に大別できる。所有権の再編というのは純粋だった国家所有の構造を国内外の法人と企業内外の個人の資本を取り入れて混合所有体制に再構築することである。この研究は中国の上場企業におけるマネジメント・バイアウト(MBO、経営者による企業買収)を通じて国有企業の所有権構造の再編、すなわち民営化のプロセスとその特徴を分析するものである。今年度は上場企業の所有構造や発行市場と流通市場の制度的慣行など、中国株式市場の一般的特徴、またそれを背景に行われてきたMBOの事例を中心に研究した。京都大学上海センターやアジア経済研究所で開催される研究会への参加、資料調査の実施、また弘前大学の教員を中心とする北東北アジア研究会での研究発表(「中国における株式制,証券市場と国有企業改革」)などを精力的に行った。 それまでの研究で次のことがわかった。 1 中国のMBOは諸外国のそれとはかなり異なっている。中国では株式は取引所で売買できる流通株とできない非流通株に分けている。経営者の会社買収対象は流通株ではなく、非流通株であるがゆえに敵対的な企業買収(TOB)という形をとらず、かわりに相対譲渡が主な取引形態である。その場合買収価格は市場価格よりずっと安い。また経営者の取得株数,比率が少ないので、買収に伴う企業の上場廃止もない。 2 中国のMBOは国有企業改革の延長線上にあるものである。経営自主権の拡大-年俸制-ストックオプション-所有権譲渡というように経営者に対するインセンティブ政策が変わってきたが、「所有者の不在」と経営者支配という状況の下で国有資産の流失が指摘されている。それをめぐって昨年の夏大論争が起こってMBOに対する政策は今後不安定になることも予想される。
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Research Products
(1 results)