Research Abstract |
本年は,研究最終年度のため,これまでの研究成果の取りまとめおよび,チェコ以外の移行国の状況把握・比較検討を,主な課題とした。研究課題のケーススタディとして,チェコの経済状況を,直接投資との関連で検討した結果,1990年代の企業改革の遅延,私有化の混乱,旧態依然とした旧国営企業改革は,ドイツなどEU諸国を中心とした外資企業の台頭によって,おおむね改善の方向へと向かっていることが判明した。たとえばチェコ統計局による公式統計によれば,この10年間で,対企業貸付のこげつき(不良債権)は40%以上減少している。また総資産利益率,株主資本利益率,税引き後収益の3つの経済指標を見ると1997年から2003年のあいだに大きく改善され,株主資本収益率は2003年時点で12%にまで延びている。このような企業財務の改善傾向に,外資企業の進出が大きく貢献していることが判明した。売上高,生産量,付加価値,雇用者数でみた外資企業の割合は2003年時点で48%と大きくその他の指標も同様の傾向を見て取ることができる。こうした外資企業の進出のなかで,電気機械と自動車関連の日系企業の進出は大きな存在となっている(2006年現在,目系企業の総投資額は200億ドル,総雇用者数は3万人にものぼっている。)。加えて,日系企業の進出によって日本的生産システム,経営システムも中欧諸国に移入されており,特にチェコではトヨタおよびトヨタ関連企業の進出により,トヨタ方式の生産システムが広範囲に移入されている現状が判明した。こうした成果は,米国マクミラン社の著作(研究発表リスト参照)など各方面で公刊され,また,2007年2月には,ハンガリー世界経済研究所主催シンポジウムで発表した。最終的には『グローバリゼーションと体制移行の経済学』(ミネルヴァ書房,共著)から2007年秋に出版される予定である。
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