2004 Fiscal Year Annual Research Report
わが国中小企業金融におけるディスカレッジド・バロワーズの理論的実証的研究
Project/Area Number |
16530210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
今 喜典 青森公立大学, 経営経済学部, 教授 (40107115)
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Keywords | 中小企業金融 / 借入意欲喪失者 / 借入応募費用 |
Research Abstract |
中小企業における資金制約のひとつとしてDiscouraged Borrowers(借入意欲喪失者)の問題がある。Discouraged Borrowersとは、正の期待NPVを有していても、銀行の厳しい審査を予想するときや自己のリスクを悲観的に評価するときには、借入応募の費用が高すぎると判断し、借入応募に踏み切らない借り手をいう。これら企業は高利のノンバンクなどで資金の調達を求めるか、資金の調達をあきらめるであろう。新規設立企業など金融機関と取引履歴の無い借り手や、過去に事業に失敗した履歴がある借り手など、大きなリスクをもつ中小・零細借手にとっては、重要な要因である。 本年度は、4年計画の初年度であり、関連文献を収集し、理論分析と実証分析の基礎的作業を行った。具体的には、Kon-Storey(2003)において開発したDiscouraged Borrowersの基本モデルを拡張し、わが国中小企業金融の特色を取り入れた理論モデルを作成することを試みた。またDisconraged Borrowersの量的重要性を検証する実証分析のための基礎データを集めた。 理論的分析での焦点は、Kon-Storey(2003)では、Discouraged Borrowersの大きさを左右する要因として、借手の負担する応募費用と銀行審査技術の誤差を抽出したが、このモデルを拡張し、以下のようなわが国中小企業金融の特性を考慮するモデルを構築することである。 ・貸出における銀行の担保重視の融資慣行 ・高リスク借手を顧客とするノンバンクの役割 ・政府系金融機関など各種の政策支援の影響 このうち本年度は、理論的部分として、リスクの大きな零細な借り手が担保資産不足な場合の借入行動、および長期的な借入取引を求める借り手が担保資産不足な場合の行動について、モデル分析を試みた。
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