2007 Fiscal Year Annual Research Report
わが国中小企業金融におけるディスカレッジド・バロワーズの理論的実証的研究
Project/Area Number |
16530210
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
今 喜典 Aomori Public College, 経営経済学部, 教授 (40107115)
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Keywords | 中小企業金融 / 借入意欲喪失者 / 借入応募費用 |
Research Abstract |
中小企業にとっての資金制約として、信用割当とともに重要なDiscouraged Borrowers(借入意欲喪失者)の問題が、わが国中小企業金融にもつ意義を明らかにすることが目的である。理論的及び実証的研究を行うため、4年計画の最終年度である本年度は、以下の作業を行った。 (1)分析の基礎的作業として、Kon-Storey(2003)モデルに関連するその後の研究展開をフォローすると、近年、欧州、北米においてDiscouraged Borrowersあるいは密接に関連する概念を用いた研究が急速に発展している。とくに経済発展にかかわって、Beckなどが提唱している「金融サービスへのアクセス障害」という概念とDiscouraged Borrowersの関連を考慮して、理論の再検討の必要性がわかった。 (2)iscouraged Borrowersの基本モデルにもとづき、わが国中小企業金融の特色を取り入れた理論モデルを開発した。Discouraged Borrowersに密接にかかわる零細企業に着目し、ノンバンクと上限金利規制の効果を考慮するモデル作成を試みた。モデルは、昨年度公表した、今喜典「ディスカレッジドボロワーズとマネーレンダー」青森公立大学ディスカッションペーパー、No.35,(2007年3月)の改訂として公表することを予定している。 (3)中小零細企業の借入行動を実証面から分析するための準備として、『貸金業白書』のデータを中心にして、データ・ベースを作成した。しかし2006年以降、グレーゾーン金利撤廃など急激に規制枠組みが変化し、収集したデータの連続性に大きな問題が生じた。零細企業の金融を貸手との関連でとらえる数少ない資料であるので前述の理論モデルに依拠して、これら問題を考慮しながら、変動の方向が理論モデルによって分析できることを明らかにした。
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