2006 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ統一後の財政問題--統一の財政的帰結と東西財政力格差の現段階
Project/Area Number |
16530213
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
武田 公子 金沢大学, 経済学部, 教授 (80212025)
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Keywords | ハルツIV改革 / 財政調整制度 / ドイツ自治体 / ドイツ統一 / 自治体財政 |
Research Abstract |
本年度の研究の重点は次の二点に置いた。第一に、東部州自治体と西部州自治体における歳出構造の相違と統一後の両者の接近状況を分析すること、第二に2005年からのハルツIV改革が東部州自治体に大きな財政負担をもたらす可能性があることから、この問題について検討することである。以下、この検討結果について本年度の成果をまとめておく。 まず、両者の歳出構造について。当初東部州自治体において歳出の半分以上を占めていた人件費がこの間急速に削減され、05年には一人当たり人件費では東部州が西部州を下回るに至っている。また、統一直後にはインフラ整備のために東部州に重点的に投資補助金が配分されたことを受け、東部州において投資的経費が西部州の1.7倍にも達していだが、その後もなお西部州より高水準であるとはいえ、投資的経費は急速に縮小を遂げており、05年には92年の半分以下にまで減少している。この結果、東西州自治体の財政構造は経費面に限定して言えば、かなり接近してきている状況が明らかになった。 次に、ハルツIV改革のもたらす影響について。西部州の自治体を悩ませていた社会扶助負担は東部州においては相対的に小さかった。これは、東部州においては従来就労率が高かったため、失業の社会コストが社会扶助よりも失業保険・失業扶助によってまかなわれていたためである。しかしハルツIV改革によって社会扶助と失業扶助が統合され、旧失業扶助者分も含めた住宅費給付の一部が自治体負担となったことによって、失業扶助受給者が相対的に多かった東部州ではこの負担分が大きく膨れあがっている。今後この経費に対する財政的配慮が財政調整を通じてどのようになされていくのか、引き続き見守っていく必要がある。
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Research Products
(2 results)