2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530220
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白木沢 旭児 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10206287)
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Keywords | 日中戦争 / 貿易 / 戦時経済 |
Research Abstract |
資料調査は、一次史料は外務省外交史料館、国立公文書館に出向き、為替管理関係、冀東密貿易関係、貿易省設置問題等に関する史料を収集した。二次資料では、全国の主要図書館の目録をもとに約2000冊の関係文献をリストアップし、小樽商科大学、東京大学経済学部、一橋大学、横浜国立大学、国立国会図書館、京都大学、大阪市立大学、大阪府立中央図書館、大阪商工会議所にて文献の閲覧、複写を行った。複写文献はのべ200冊ほどである。また、新聞、雑誌記事の調査では、北大所蔵または自己所蔵のなかから『大阪朝日新聞』、『人絹』、『海外経済事情』について進めている。また、すでに集めた資料から重要事項を読み込みデータベース化、カード化を行った。 これらの作業を通じて第一に、日中戦争期にいわゆる貿易をテーマとした文献が夥しい数出版されたこと、したがって、戦時体制・戦時経済を考える際、貿易問題は重要な位置を占めることが予想できること、第二に、円ブロック貿易問題では、輸出業界や関西財界からは規制緩和を求める声が多く出ており、国際収支問題(外貨獲得)というマクロ的な政策課題が、輸出増進という業者のミクロ的な要求と整合しないことがわかった。かつて原朗氏が明らかにしたように、外貨獲得が日中戦争期の至上命令であったことは確かだが、貿易、とりわけ輸出を業とする者にとっては輸出数量、金額の増嵩こそが最大の関心事であった。マクロ的な政策課題と業者の利害との矛盾は、今後、戦時統制経済を分析する際の重要な視点となるだろう。
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