2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナチス期統制経済における貯蓄銀行の意義と産業金融に関する史的研究
Project/Area Number |
16530225
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50174066)
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Keywords | ドイツ / ナチス / 統制経済 / 貯蓄銀行 / 金融市場 / 金融恐慌 |
Research Abstract |
ナチス期の貯蓄銀行・振替銀行に関する史資料のうち、ドイツ貯蓄銀行・振替銀行協会などの中央組織と全体動向については、ボンの貯蓄銀行史料センターだけでなく、ベルリンのドイツ連邦文書館にかなり所蔵されている。そこで、今年度の研究目的にしたがって、貯蓄銀行の実態と産業企業との関係を調査するために、3週間ほど連邦文書館を訪問して重点的に関係史料を収集し、また貯蓄銀行史料センターからも貯蓄銀行等の営業報告書を取り寄せ、分析を進めた。その結果、研究史との関連で次の新たな論点を見出し、その検証を行っている。 1.ナチス金融体制は、一方で1931年金融恐慌から回復し、リスクを回避できる安定的な体制を構築するとともに、他方で1933年のヒトラー権力掌握以後の軍事統制経済に照応する体制構築過程のなかで、およそ1935年ごろまでに成立した。 2.その際、ナチス金融政策思想は、初期の反資本主義的傾向(地域金融機関としての貯蓄銀行重視)からしだいにベルリン大銀行重視へと移行したと考えられているが、結局は両者を監督制度と経済統制組織を通じてコントロールすることになった。 3.ナチス金融体制の重要な特徴は、第一に短期貨幣市場と長期資本市場との分断性を解消し、同時に両者の金利を政策的に引き下げること、第二に金融市場の構造に対応した金融機関の分業体制を構築すること、第三に国内で形成された資金を軍事経済に優先的に配給し、それ以外の資金需要を抑制すること、第四にこれら全体としての金融システムをライヒスバンク(とライヒ経済省)によって統制する金融政策を展開することである。 以上の論点について、一部、個別論文として公表した。
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Research Products
(1 results)