2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530237
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
勘坂 純市 創価大学, 経済学部, 助教授 (20267488)
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Keywords | イングランド / 中世 / ハンドレッド・ロールズ / 農業制度 |
Research Abstract |
1279-80年にイングランドで作成されたハンドレッド・ロールズ(Hundred Rolls)の記載内容について、コンピューターを用いたデータ・ベース化を進めた。その過程で、平成16年夏には、渡英して、Public Record Officeにおいてハンドレッド・ロールズの原本の調査、およびエクセター大学、ブリストル大学の図書館で中世史料の調査を行った。 また、中世イングランドの農民の地代決定過程を、栄養摂取と労働能力の関係を考慮した、労働地代の経済モデルの構築を通して考察した。効率的な労働力を確保するために、労働者に十分な栄養を与える必要があることは、今日の低開発諸国研究でしばしば指摘されている。しかし、そうした研究では農民(もしくは労働者)の土地保有規模は、与件として扱われているにすぎない。これに対し、本報告のモデルでは、保有地規模を内生変数として扱い、労働地代を、土地保有と労働提供の連結契約として考察する。すなわち、領主は農民に土地を与えることによって、その食物(栄養)摂取量を増加させ、効率的な労働力を「地代」として受け取ろうとしたと考えるのである。このモデルによる分析の結果は、二種の労働地代契約、すなわち、農民に単位面積当りの労働能力を最大化する規模の「効率的保有地」が与えられる契約、および、小規模の土地をもち市場賃金レベルの労働地代を負担する契約の存在を予測する。この予測される結果を、先のハンドレッド・ロールズのデータ・ベースを用いて実証した。 この研究成果は、「土地所有・栄養・『農奴制』」として、2005年度第74回社会経済史学会全国大会(4月30日)において報告予定である。
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