2004 Fiscal Year Annual Research Report
融資時の企業判断にかかわる意思決定プロセスの実験的研究
Project/Area Number |
16530248
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梶原 晃 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (70243368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 倫紀 大阪経済大学, 経営学部, 専任講師 (20373110)
砂川 伸幸 神戸大学, 経営学部, 助教授 (90273755)
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Keywords | 金融機関 / 企業融資 / 倒産予知 / 意思決定プロセス / 判断基準 / ポリシーキャプチャリング / 実験的研究 / コンジョイント分析 |
Research Abstract |
文献・理論研究:本研究テーマの理論的な理解を深めるため、企業融資の実務に関する文献や、融資業務の重要なポイントとなる企業倒産予知モデルに関する理論的、実証的文献のサーベイが行なわれた。企業倒産予知の数理モデルにおいては、複数の異なるモデルの存在が確認されたが、これらのモデルを、どう本研究テーマである融資の意思決定プロセスに関連づけられるのかについての検討も行なった。 聞き取り調査:金融機関が行なう融資の意思決定プロセス、そのプロセス上で重要となる情報やファクター、それらの情報やファクターを組み合わせて総合的な判断をする際の判断ウエイト、および企業判断や意思決定の癖やバイアスの存在などについて、金融機関の融資担当社員を中心にした聞き取り調査が行なわれた。その結果、金融機関の融資に伴う意思決定は、当初われわれが予想していたよりもはるかに複雑なプロセスと要因が絡み合っていることが明らかになった。一方、そのような複雑性の中で、より本研究を有意義にするために、融資の意思決定プロセスのエッセンスを抜き出すことによる簡略化されたコンセプチュアルモデルを構築する試みがなされた。このコンセプチュアルモデルは、まだ十分に精緻化されたものとはいえないが、今後、さらなる聞き取り調査や文献調査を通じて精緻化され、後に述べる実証研究の土台となる理論や仮設を提供するようになるものと予想される。 実験デザイン:本研究では、ポリシーキャプチャリング方法論によって、融資の意思決定に伴う判断基準を理解することが目的とされていた。それに鑑み、まず、ポリシーキャプチャリング方法論およびそれが使われた実証研究に関する文献サーベイを行い、方法論的理解を深めた。つぎに、ポリシーキャプチャリング方法論の有効性を検証するため、ポリシーキャプチャリング実験法のパイロットスタディーを3回ほど行なった。その結果、ポリシーキャプチャリング法の長所および短所の把握がなされ、今後、この手法を本格的に用いていく際の課題、もしくはこの方法に代替するような手法の検討も含めたかたちで研究を進めていくことの必要性が認識された。代替的手法とは、マーケティングリサーチで用いられるコンジョイント分析であり、この手法も、ポリシーキャプチャリングと同様に、意思決定の傾向を数量的に把握しようとするものである。今後、コンジョイント分析が実際に使われた文献や方法そのものについての文献をサーベイしていくことにより、ポリシーキャプチャリングとの比較検討を行なっていくことが求められる。さらに、実際の実験的調査を、スタンドアローンのコンピュータを前提とするプログラムを用いたものにするべきか、それともインターネットもしくはイントラネットを用いたウェブベースのプログラムを用いたものにするべきかについて、情報技術の専門家との技術的側面に関する情報交換を通じた検討が行なわれ、当面のあいだは、ウェブベース実験の実現可能性をにらみながら、技術的制約により、スタンドアローンのコンピュータを用いたより簡易な方法で取り組む旨の方向性が示された。
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