2004 Fiscal Year Annual Research Report
チーム生産とモラル・ハザード行動および社会規範の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
16530253
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鵜野 好文 広島大学, 経済学部, 教授 (40137394)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (70151610)
|
Keywords | 社会規範(Social norm) / 社会資本(Social capital) / チーム生産 / モラル・ハザード |
Research Abstract |
チーム生産におけるモラル・ハザード行動問題はそれ程目新しいものではない。そして、これらはインセンティブ・システムの制度設計問題として長年研究されてきた。しかし、近年、経済的インセンティブ一辺倒の制度設計の視点ではなく、社会組織が持つ社会規範(social norms)、社会資本(Social Capital)がモラル・ハザード行動に抑制効果を持つことが注目されるようになった。 本プロジェクトは、チーム生産のモラル・ハザード行動問題を、経済的インセンティブ制度設計だけでなく、社会組織が持つ社会規範、社会資本を積極的に機能させることで解決をはかるという立場から、社会規範、社会資本が持つモラル・ハザードの抑制機能を明らかにする。とりわけ、現実の社会で、組織メンバーがモラル・ハザード行動を選択することが経済的に有利であるときでさえ、なぜ自己規制的な行動を選択するのかを説明するモデルの展開を目指している。 本プロジェクトでは、平成16年度は社会規範を考慮した制度設計の研究を中心に文献レビューが進められた。行動経済学および進化ゲームの文献にみられる理論モデル分析は、経済的インセンティブ・システム設計に加え、社会規範および社会資本を考慮した制度設計がより効果的にモラル・ハザード行動を抑制できることを指摘している。本プロジェクトでも進化ゲームによる理論モデルにより同様の結果を得ている(Uno&Inoue(2004) : CTW サイト参照 http://obata.misc.hit-u.ac.jp/~itoh/ctw-j.html)。これらの理論モデルは評判効果と社会規範への不服従に対する不効用効果を考慮しており、十分に現実社会の説明力を持ち、集団行動の論理を説明する理論的仮説を提供し、さらに、その実証を可能にすると考えられる。本プロジェクトでも、平成17〜18年度は現実の説明能力のより高いモデルの構築とその実証を目指している。
|