2006 Fiscal Year Annual Research Report
チーム生産とモラル・ハザード行動および社会規範の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
16530253
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鵜野 好文 広島大学, 大学院社会科学研究科, 教授 (40137394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (70151610)
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Keywords | 社会規範(Social norm) / 社会資本(Social capital) / チーム生産 / モラル・ハザード |
Research Abstract |
チーム生産における組織のモラル・ハザード行動問題は目新しいものではない。実際、それらはインセンティブ・システムの設計問題として長年に渡って研究されてきた。しかし、ここにきて、経済的合理的な制度設計の視点ではなく、本来、社会組織が持つ社会規範(social norms)が組織のモラル・ハザード行動に抑制効果を持つことが注目されるようになった。そして、最近では、社会規範を遵守する個人の内生的および外生的動機付けを問題にする研究も現れるようなった。 本プロジェクトでは、従来の研究には十分に考慮されていなかった社会規範が組織のモラル・ハザード行動抑制にいかなる影響を及ぼすのか、同時に、個々人のモラル・ハザード行動(/非モラル・ハザード行動)が社会規範にいかなる影響を及ぼすのかを、ゲーム理論1特に、進化ゲームのアプローチを用いて明らかにした。 (1)組織行動のガイドラインとなる制度は、規則、信念、規範等が組み合わさって一つの統一体として個人の行動に影響を与える外生的な存在といえる。このとき、個人が制度により特定の行動に従うことを規定され動機付けられるという視点を強調するとき、制度は、個人に対し、いわゆる、ミクロ経済学的なインセンティブ設計の基礎を与えることになる。(鵜野、井上「チーム生産と効率的組織構造」(2006)) (2)しかし、制度は頑健性を持つ一つの統一体ではなく、規則、信念、規範等が組み合わさった、いわゆる、個人の行動に根ざす内生的な存在とする視点をとることも可能である。この視点をとるとき、個人が特定の制度をなぜ遵守するに至ったのかという問題を、動機付けという社会・心理学的観点から考察することが可能となる。このことは、ミクロ経済学的なインセンティブ設計に社会・心理的要因を加味することになる。(鵜野「チーム生産と社会規範」(2005)、「社会慣習と企業組織の法令遵守」(2006)) (3)本プロジェクトでは、制度をゲームの均衡、あるいは、ゲームの均衡戦略へ動機付けする共通信念とする古典ゲームの視点と制度を個人の属性、すなわち、個人の資質、習慣、嗜好の相互作用とみなす進化ゲームの視点を融合した理論枠組みを構築することで現実に近い組織行動モデルを構築することができた。これにより、同時に、従来以上に実証研究により耐えうる理論モデルを構築することができたと思われる。(Uno & Inoue, "Hierarchical Organization and Norm Management" unpublished paper)
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Research Products
(2 results)