2004 Fiscal Year Annual Research Report
伝統工芸技術の伝承をテーマとする「地域活性化」事業に関する社会学的研究
Project/Area Number |
16530313
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
加藤 眞義 福島大学, 行政政策学類, 助教授 (60261559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 仁 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (30214729)
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Keywords | 伝統工芸 / 後継者育成事業 / 苧麻 / 技術伝承 / コミュニケーション過程 |
Research Abstract |
1.文献研究により、研究目的に掲げた対象地(福島県昭和村、沖縄県宮古郡、山形県温海町、同櫛引町)のうち、当面の対象地を「苧麻」を原材料とする事業が行われる前二者に絞ることとした。2.昭和村については、(1)行政担当者から事業の概要についての聞き取りを行ない、(2)研修事業参加者へ、参加動機・生活史・地域観についての聞き取りを行った。また(3)過去の研究調査報告等についてのサーヴェイを行った。3.宮古郡については、(1)行政担当者から事業の概要についての聞き取りを行ない、(2)研修事業参加者へ、参加動機・生活史・地域観について聞き取りを行い、(3)民間工房の関係者にも同様の聞き取りを行った。また(3-4)過去の研究調査報告等についてのサーヴェイを行った。 以上により、次のことが明らかになった。1.宮古のばあい、宮古上布生産の歴史的経緯(薩摩支配による、以前の伝統を尊重しない様式統一や、旧通産省による「伝統工芸品」と旧文部省による「重要文化財」指定における定義要件の不整合等)により、関係者の間での「伝統」の定義そのものに大きな幅があり、そのことが後継者にたいする技術伝承事業のありようにも大きな影響を与えている。現時点では、これらの定義幅を「混乱」としてではなく可能性の幅としてポジティヴに生かすことが、今後の伝承事業の鍵となっていると考えられる。2.昭和村のばあい、その歴史的経緯(原料供給地としての歴史が長く、貢納品ないしは商品としての最終生産物輸出の歴史をもたない等)ゆえに、めざすべき製品の具体的なイメージが研修参加者にも必ずしも明確ではないが、それゆえに、狭義の「技術」ではなく山村生活の経験・現代生活の見直し等を含むより広義の「生活経験」が事業参加への誘因として大きなウェイトを占めている。次年度、とくに事業参加者に関する補充調査を行い、その結果をふまえて、最終的な分析結果をまとめることとする。
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