2005 Fiscal Year Annual Research Report
伝統工芸技術の伝承をテーマとする「地域活性化」事業に関する社会学的研究
Project/Area Number |
16530313
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
加藤 眞義 福島大学, 行政政策学類, 助教授 (60261559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 仁 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (30214729)
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Keywords | 伝統工芸 / 後継者育成事業 / 苧麻(ちょま) / 技術伝承 / コミュニケーション過程 |
Research Abstract |
本研究では、苧麻(ちょま)を素材とする織物生産の技術伝承に焦点をあわせ、同生産と後継者育成事業の現状について調査研究を行った。対象地は、福島県昭和村、沖縄県宮古島市、同石垣市、新潟県小千谷市、同塩沢町(現南魚沼市)である。宮古島市と石垣市においては織物組合と個別工房において、小千谷市・塩沢町においては織物組合において、織の研修事業が行われているが、これらの地域においては地元出身者優先の原則で募集が行われている。これは、研修後の継続的従事を視野においたものであり、人口面での過疎をうけて地元外からの積極的な募集を行っている昭和村とは対照的である。ただし、(1)これらの地域においても実際上は、地元出身者にも門戸を開かざるをえなくなっている点、(2)昭和村の場合、個々人の定住以外にも、後継者育成制度そのものが後継機能を果たすとの位置づけのもと、一時的寄留者の循環により伝承事業の活性化を図っている側面がある点に留意する必要がある。さらに今回の調査研究において、織従事者不足以前に、より深刻な課題として、素材である苧麻の生産そのものと、苧麻糸の績み手不足が存在することが明らかになった。高齢女性の仕事として自動的に継承されることが不可能な今日において、この点を克服するための試みとして、素材生産者と布完成の達成感を共有する場を設定する試みや、織り手自身が生産過程全体を見通す視野と技術を身につける研修事業の試みの意義を指摘した。伝統の継承が自明な事柄ではなく、そもそも伝統とは何かという従事者の側からの再定義を必要とし、個人のライフスタイルに応じた選択という側面を有する今日、伝統継承事業はより自覚的・再帰的な取り組みによってのみ支えられるというのが本研究の結論である。
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Research Products
(1 results)