2005 Fiscal Year Annual Research Report
福祉コミュニティの研究-身体障害者福祉モデル都市事業の検討を中心として-
Project/Area Number |
16530319
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平川 毅彦 富山大学, 人間発達科学部, 助教授 (80189828)
|
Keywords | 福祉コミュニティ / 身体障害者福祉モデル都市 / 福祉のまちづくり |
Research Abstract |
1973年に身体障害者福祉モデル都市指定を受けた別府市と仙台市に関して、当該二都市のほか当時の関係者がかかわりをもった東京都町田市、愛知県岡崎市、岡山県倉敷市、福島県二本松市において資料収集及び聞き取り調査を行った。その結果、(1)障害当事者を中心としてその生活を地域社会レベルで支援するという「福祉コミュニティ」の源流は1960年代末の仙台市の身体障害者施設「西多賀ワークキャンパス」内における、入所者と学生ボランティア、そして彼らを支援するケースワーカーによって始められた「生活圏拡大」運動にあったこと、(2)この動きは、当時の仙台市行政当局による住民参加政策と結びつき、「福祉のまちづくり市民の会」として活動を拡大・定着するともに、新聞・テレビといったマスコミによって全国に紹介され、各地で類似した運動が展開し、(3)1973年から始まる厚生省(当時)による身体障害者福祉モデル都市事業として国レベルでも定着したことが明らかになった。しかし、(4)脊髄損傷、脳性マヒ、そして筋ジストロフィーといった障害種別によって生じる生活課題の違いにより必ずしも生活圏拡大運動は一本化へと向かうことが出来なかったこと、さらに(5)「福祉のまちづくり」が民間サイドから行政サイドへと主導権が移行するなかで、障害当事者および地域関係住民の存在が置き去りにされるという課題も明らかになった。 障害当事者を中心としてその生活課題を解決し、生活全体を地域社会において支援するという発想から構成された「福祉コミュニティ」概念は、このように1960年代末からの身体障害者を中心とした「福祉のまちづくり」運動の検証によってその意義と課題が明確なものとなった。そしてここから、「施設から地域へ」「当事者主体と自己決定」といった福祉をめぐる今日的課題を検討する上で貴重な知見を引き出すことが出来た。
|