2004 Fiscal Year Annual Research Report
公共性の構造変化についての社会学的研究-医療・福祉の分野を事例にして-
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16530323
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河村 則行 名古屋大学, 環境学研究科, 助教授 (30234131)
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Keywords | 公共性 / 医療・福祉 / ウェルフェア |
Research Abstract |
本研究の目的は、グローバリゼーションのもとで市場・競争原理の強化が進められているなかで、生活の基本である医療・福祉の分野を事例にして、公と私の役割分担の変化などの公共性の変容を研究することにある。 現在、医療の分野でも、患者中心の医療、情報公開など大きな制度改革が進められており、本年度は医療の分野からその制度改革の内実とその変化の意味、課題を明らかにした。医療費の高騰のもとで、医療資源の効率的な活用が求められ、入院日数の短縮、在宅医療・介護の方向、医療と福祉の機能分化が推進されている。しかし、日本の住宅政策の貧困、劣悪な住宅状況が、在宅での医療を困難にしている。日本の平均日数の長さは、住居の貧困と関連しており、このことは住宅政策などの社会政策の重要性を示している。「社会的入院」という言葉に現れているように病院が福祉(生活)の機能を担わされていたのは、選別主義の特徴を持つ日本の福祉の貧困を示している。 また、医療機器の高度化で治療技術が進歩したが、ケアの方がその進歩についていけず、キュアとケアのバランスがとれていないことが問題になる。退院、転院後のケアが継続されるのか、どのように統合して、全体としての医療サービスを提供するのかは、社会の問題である。連携するには情報や問題の共有化や、密な情報の交換、信頼性が必要であり、そのためには空間的な近接性としての地域社会のあり方が問題になる。 重要なことは、患者のウェルフェア、ウェルビーイングが高まるかどうかであり、病院だけでは問題を解決できず、そのためには、医療や福祉が、組織や地域社会の中でのどのように連携できるのか、そのコミュニケーションのあり方が課題になることが明らかになった。
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