2006 Fiscal Year Annual Research Report
公共性の構造変化についての社会学的研究-医療・福祉の分野を事例にして-
Project/Area Number |
16530323
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
河村 則行 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 助教授 (30234131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱松 加寸子 名古屋大学, 医学部, 助教授 (20320997)
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Keywords | グローバリゼーション / 医療・福祉 / 公共性 / 協働 / 専門職 |
Research Abstract |
グローバリゼーションのもとで、医療・福祉や教育などの公共分野でも、「官から民へ」、「国から地方へ」の構造改革が進められている。本研究は、医療や福祉、教育サービスは、他の市場サービスと同じなのか、それとも特殊性があるのかという問題設定のもとで、行政と民間との関係のあり方について研究を進め、なぜ医療や教育は地域に根ざした活動が求められるのか、協働とは何か、なぜ協働が必要になるのかをテーマにした。教育や医療は個人として自立するための基本財である。医療の特徴は、いっ病気になるかわからず、24時間無休で対応しなければならないなど、不確実性が高いことである。病院や学校は、地域社会の核であり、それが機能しなければ地域は衰退する。教育や医療には外部性があり、本来の機能以外にも多くの機能をはたしているが、機能不全になっており、過酷な労働条件のもとでぐ医療崩壊や教育崩壊が生じている。病院や学校は社会や地域の問題、矛盾をそのまま背負い込むにことになるから、病院や学校だけでは問題を解決できない。そこに福祉との連携、地域との連携が必要になる理由がある。教育や医療は、行政で行おうが、民間で行おうが、困難な事業であり、責任の押し付け合いになる。それゆえ、その問題解決では、地域での協働や連携が必要になっている。その具体的事例として子育て支援をとりあげ、なぜ地域での協働が必要になるのかを明らかにした。協働では、NPOなどが行政の単なる下請け機関になるのか、その権限のあり方が問題になるし、ニードの把握、連携のコーディネータなどで、専門職のあり方が重要になる。社会資本や信頼性がなければ、「集合行為のディレンマ」により、連携がうまくいかないので、その社会資本や信頼性の基盤としてコミュニティをとらえた。 重要な問題は、医療においても地域間格差が拡大しており、医療機関の集約化で、地域医療の崩壊が生じていることである。新臨床研修医制度のもとで、大学の医局が地方の病院から医師を引き上げたことが直接的な原因であるが、地域医療のあり方において行政と地域住民とのコミュニケーションが求められている。
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