2004 Fiscal Year Annual Research Report
理解社会学と「歴史主義的啓蒙」の思想的・理論的連関に関する研究
Project/Area Number |
16530330
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
嘉目 克彦 大分大学, 経済学部, 教授 (50117412)
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Keywords | ドロイゼン / 歴史主義 / 現実 / 人倫的理念 / 歴史宗教 / 啓蒙主義 |
Research Abstract |
19世紀ドイツにおける歴史の科学化傾向とこれに対するニーチェ及びトレルチの批判を背景に、「歴史主義」の潮流を概観した上でドロイゼンの「歴史」概念を再度精査した結果、以下の諸点が判明した。 普遍的理念としての「歴史」:ドロイゼンは実証主義、啓蒙主義及び「いわゆる歴史主義」等の現実の特殊な思考様式の「歴史的な権利」に対して、普遍的な『歴史の権利」を主張する。いかなる様式のものであれ具体的な思考もすべて人間的現象であり、「歴史」の一個の現象形態に過ぎない。「経験的自我」が「一般的自我」(人間へと「生成」する過程が「歴史」(人類史)であり、「歴史的」であるのは「人間の生」である。この意味で、「歴史」はあらゆる具体的現象・「現実」を超えた普遍的法廷・理念である。ドロイゼンのこの歴史観を支えるのは、ランケの「歴史宗教」にも通底する思想である。 理念の現象形態としての「現実」:「現実」は自然的所与ではなく、人倫的諸理念、人倫的諸理念の現象形態及び人格(の願望ないしは意思活動)の相互連関から構成された「此処と今」の経験的現象である。「此処と今」は構成されて生成する1個の特殊な「人倫的世界」である。個人は「人格」の理念と「良心」に基づき人倫的諸理念独自の「権利」・「要求」に応じる(理念の「化身」となる)ことによって、人倫的世界の構成要素としての「人間」となる。人間も歴史的生成物であることから、ドロイゼンにとっては、ディルタイ、ジンメル及びヴェーバーにとってと同様、行為の「動機」の「理解」が「歴史的方法」として不可欠のものとなる。
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