2006 Fiscal Year Annual Research Report
瀬戸内海離島出身者の地域移動とネットワーク:地域社会の変容に関する実証的研究
Project/Area Number |
16530346
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
武田 尚子 武蔵大学, 社会学部, 助教授 (30339527)
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Keywords | 地域社会 / 瀬戸内 / 離島 / 受苦圏 / 日常的知識 / 半=専門的知識 |
Research Abstract |
平成18年度は、広島県福山市内海町出身者について、平成16年度・17年度調査の補足的調査を実施した。また、平成16年度〜18年度の間に収集したデータや資料の整理・分析を行い、研究会における発表、意見交換など、研究成果をまとめることに重点をおいた。その結果、次のような新たな知見や一定の研究成果を得ることができた。 広島県福山市内海町では、1970年代後半〜80年代前半に、LPG基地建設反対運動が起きた。この反対運動を事例として、LPG基地の負の影響をうける受苦圏に該当するとの認知が住民の間でどのように進展し、反対運動が形成されていったのか、その過程を分析することができた。分析の内容を以下に記述する。 反対運動の中核的人物は、情報紙を精力的に発行し、地域社会にLPG基地に関する知識を普及させた。LPG基地が危険という基本的なフレームは、このような「半=専門的知識」の流布によって形成された。しかし、町内の集落には、自然村として蓄積してきた歴史や、集落間にみられる戦後の職業分化の相違が存在していたため、「半=専門的知識」だけでは、異なる集落の人々が連帯し、有効な反対運動を組織するには不十分であった。 町内のそれぞれの集落には、集落の社会構造や変容の過程を反映した「歴史的に蓄積されてきた決め事の制度」が維持されていた。これは、日常生活の根幹に関わるしくみであり、直接民主主義的な地域社会運営のありかたが「日常的知識」として、地域社会に蓄積されていた。この部分が違犯されているという人々の判断が、受苦圏に該当するという認知を生みだし、反対運動の組織化につながっていったと思われる。「日常的知識」と「半=専門的知識」の相互補完が、受苦圏に該当するとの認知を進展させ、集落間の異質性をこえて、連帯する状況を生みだしていったと考えられる。 以上のように、地域社会において、反対運動が組織化されていく状況について、歴史的視点から明らかにすることができ、一定の研究成果を得ることができた。
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Research Products
(1 results)