2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本におけるメディアと若者に変容に関する社会史的研究
Project/Area Number |
16530359
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
難波 功士 関西学院大学, 社会学部, 助教授 (20288997)
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Keywords | 若者文化 / 戦後社会史 / メディア / サブカルチャー / 消費文化 |
Research Abstract |
一昨年度より書き継いできた「戦後ユース・サブカルチャーズをめぐって」の第4・5巻を書き上げた。この計5本のシリーズ論文によって1950年代から90年代までの、若者文化の変容とそこに果たしたメディアの役割の通史的な記述が完了した。また「渋カジ考」「"-er"の系譜」では、特に80年代後半から現在に至るまでの若者文化の変容にふれており、本研究の成果は、戦後社会におけるポスターの表象を扱った「ポスターの社会空間」といった論考にも反映されている。 この二年間に多くの資料に当たることによって、研究を始める以前には思いもつかなかった点が、いくつか明らかとなってきた。たとえば、当初中産階級子弟の若者文化とみなしていた「太陽族」に関して言えば、研究の途中からは、「プロト太陽族」と、映画における表象や、新聞・週刊誌などマスメディアによるモラル・パニック視を経た後の、いわば「メディエイテッド太陽族」とに分けて、その階級的なバックグラウンドなどを議論すべきだと認識を新たにした。また、1950年代から60年代初期にかけての、若者風俗の震源地としての「銀座」の重要性も再認識した。 そうした多くの新たな事実の発見・確認の一方で、当初、アーヴィン・ゴフマンの『フレーム・アナリシス』の用語を援用してたてた仮説-80年あたりを境に、ユース・サブカルチャーズにおいて、「共在から関係へ」「他者とのframe disputeから、不断の自省的な状況定義としてのユース・サブカルチャーズへ」といった移行が進み、「re-keyingの優越」「若者というroleの確立」等の現象が顕著になってきたのではないか-に関しては、依然基本的に支持されうるものと考えている。 今後は、前述の5本のシリーズ論文を軸に一書を編むことで、戦後の若者文化の変容を概括し、国際的な比較の俎上にのせうるよう、さらなる理論的・実証的な深化を期したい。
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