2004 Fiscal Year Annual Research Report
看取る文化とその社会的条件--在宅で迎える死はどのようにして可能か--
Project/Area Number |
16530364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Bunka Junior College |
Principal Investigator |
大出 春江 東京文化短期大学, 生活学科, 教授 (50194220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 美優 神戸大学, 医学部, 助教授 (40189064)
松田 弘美 長野市医師会看護専門学院, 専任教員
古川 早苗 法政大学, 社会学部, 兼任講師
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Keywords | 看取り / 訪問看護 / 在宅死 / 病院死 / 湯灌 / 死後の処置 / 死化粧 / 訪問看護ステーション |
Research Abstract |
平成16年度は研究代表者および研究分担者による月例の研究会を実施し、互いの進捗状況を報告するとともに、それぞれの成果を共有した。それらの経過および成果を記録として残すために、研究分担者である松田が管理する形でweb上に電子会議室を設置し、書類やインタビューデータの共同保管をし、必要に応じて各自が参照できる形にした。これにより、研究者相互の研究交流を一層円滑にすることが可能になった。 平成16年度の研究活動の内容と分担は以下の通りである。 1)研究全体の統括、および家政学書にみられる看取りと家庭看護に関する記述の収集(大出)2)看護学教科書における看取りと死後の処置に関する記述の収集および文献の整理。末期医療に関する先行研究および調査資料の整理。神戸を中心とした訪問看護ステーション、葬儀社、在宅で看取りをされたご遺族へのインタビューの実施と連絡調整。(中村)3)長野市における訪問看護ステーションへのインタビュー調査のための連絡調整と実施。電子会議室の管理。インタビューデータ分析のための資料作成。(松田)4)近代から現代に至る葬送儀礼の変化(湯灌、死にかかわる装い、納棺の仕方を中心に)を文献研究を通して跡づける作業および葬送一般にかかわる文献リストの作成(古川) 以上の研究経過から当初の予定とは異なる収支となった。最大の理由は申請補助金額の減額にある。本研究では看取りに関し研究者全員が十分な情報を共有すること、在宅死と看取りをめぐる実質的検討にたえうる資料の必要性を認識し、理論的サンプリングによるインタビュー対象の拡大と聞き取り内容の深化をはかった。したがって今年度の出費は交通費と文献収集、および書誌データの共有のための文献ソフトの購入等に割き、テープ起こしや移動費の多くは科研費以外からの出費とした。 現段階での研究成果は以下の通りである。1)病院死が普及する以前、とりわけ戦前期、家庭での看取りは家庭看護として家政学書に登場し、女性たちに期待される常識として捉えられていた2)病院における死後の処置に関する教育は看護者の手から手に教育されるものから、ビデオ教材だけによる教育に代わるか、死後の処置自体が看護教育から外される傾向がある。3)訪問看護ステーションは介護保険制度実施以降、各地に定着しているが、その組織形態、運営方式、あり方は必ずしも一様ではない。しかし、在宅での看取りを支えるための重要な拠点の一角を構成していることは確認できた。4)死装束、死化粧等など、死の商品化は急速に進んでいる。
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