2005 Fiscal Year Annual Research Report
不確定志向性と文化の観点からみた「補償としての確信」現象
Project/Area Number |
16530411
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
安永 悟 久留米大学, 文学部, 教授 (60182341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 靖直 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60223880)
甲原 定房 山口県立大学, 生活科学部, 助教授 (20225387)
笹山 郁生 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30235296)
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Keywords | 不確定志向性 / 補償としての確信 / 自尊感情 / 文化比較 / IAT |
Research Abstract |
本研究は個人、文化の不確定志向性が補償的確信に及ぼす効果について検討する。 自己に関わる不確定性がもたらす脅威に対する防衛反応として、脅威が発生した領域以外の態度をより強固なものとすることで脅威を回避しようとする「補償的確信」とよばれる反応が出現する。ここで、明示的自尊感が高く、潜在的自尊感が低い個人はもっとも防衛的であり、補償的確信が強く現れると予測される。 加えて、自己に関わる不確定性への認知活動の差異である不確定志向性理論(Sorrentino & Roney,2000)によれば、不確定志向性の高い個人(uncertainty oriented person : UO)と不確定志向性の低い個人(certainty oriented person : CO)の違いが補償的確信に効果を持つ可能性がある。自分の不確定志向性と文化の持つ不確定志向性(カナダはUO的文化、日本はCO的文化と仮定)が不一致の場合(カナダ在住のCO、日本在住のUO)、不確定性に遭遇すると、積極的に不確定性を解決する(フローあるいはアンチフロー)ことなく、受動的状態(ノンフロー)になり防衛的反応である補償的確信を示すと予測される。 以上から個人の不確定志向性×文化の不確定志向性×明示的自尊感×潜在的自尊感の交互作用的効果が補償的確信において予測される。中心的仮説は、カナダのCOはUOに比べ補償的確信が大きくなる一方、日本のUOはCOに比べ補償的確信が大きくなるだろうというものである。 カナダ人195名、日本人90名の男女大学生の被験者に自分(友人)が現在抱えているジレンマを想起させた後(不確定性の操作)、社会的問題(死刑制度、妊娠中絶の是非)について判断させた。結果は概ね仮説を支持するものであった。この結果は場面の持つ不確定性と個人の不確定志向性の一致・不一致が個人の認知活動に及ぼす効果から考察された。
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