2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の特異的言語発達障害の特微および評価法に関する言語学的研究
Project/Area Number |
16530420
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 友彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40159893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大伴 潔 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30213789)
藤野 博 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (00248270)
福田 真二 北海道医療大学, 心理科学部, 助教授 (70347780)
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Keywords | 特異的言語発達障害(SLI) / 縦断研究 / 日本語 / 文の誤り / 時制 / 受動文 / 態 / 格 |
Research Abstract |
平成17年度は、昨年度に引き続き、(1)典型的な日本語SLI例を対象とした縦断研究を継続するとともに(2)東京都内の難聴・言語障害学級を対象とした、SLIが疑われる子どもに関する調査を行った。 (1)については典型的なSLI例についての縦断研究を昨年度に引き続き、一週間に一度のペースで行った。この縦断研究は平成18年3月現在も継続中である。平成17年4月から平成17年9月まで行ってきた縦断研究の結果については、第17回日本発達心理学会(平成18年3月、九州大学)で発表した(ポスター発表)。この発表の目的は、日本語の典型的なSLIと思われる1例の約6カ月間の自然発話にみられる文の誤りの特徴を言語学的視点から明らかにすることであった。この研究の結果、対象児の日本語の誤りの特徴として、1)時制の誤り、2)照応形の誤り、3)動詞の態に関する誤り、4)格関係にかかわる誤り、などが明らかになった。 (2)の調査では、まず東京都の難聴・言語障害学級に対してSLIが疑われる子どもの調査依頼を郵送した。この調査では、SLIの特徴をあらかじめ調査用紙に記述し、対応する子どもがいるかどうか、いた場合、対象児に対してSLIの評価と言語面に関する掘り下げた検査に協力してもらえるかどうか、に関する情報を得ることを目的とした。その結果、本研究に協力が得られる学校は5校のみであった。調査に対する回答の分析の結果、その理由は、日本においてはSLIそのものがどのような障害なのか知られていない点にあった。協力を得た5校を直接訪問し、SLIと思われる子どもについて詳しい情報収集を行った。その結果、上記の縦断研究の対象児のような典型例は1例も存在しなかった。しかし、さまざまなタイプのSLI児の存在が示唆された。
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