Research Abstract |
研究3 幼児期における向社会性についての認知と向社会的行動との関連-横断的検討- H16年度3歳児を対象に,向社会性についての認知と行動との関連に関して縦断調査(2年目)を行なった。調査は,向社会性についての認知評定,仲間関係評定,向社会的行動評定(行動観察・教師評定)を行った。 その結果,3歳時よりも4歳時の方が援助成功回数・友だちからの被援助回数が多くなり,向社会的に振舞った方がよいという価値観が高まることが示された。さらに,縦断的分析を行った結果,3歳時の価値観と4歳時の効力感,および3歳時の効力感と4歳児での価値観との間に関連が示された。また,向社会的行動に関しては,3歳時に向社会的場面への関わりが多い幼児ほど,4歳時には仲間から援助を受ける回数が多く,教師からも向社会的行動が多いと評価され,仲間指名も多いこと,一方,3歳時に仲間から援助を受ける回数が多かった幼児は,4歳時には向社会的場面への関わりが多く,仲間への援助も多いことが示された。 次に,3歳時点での向社会性についての認知に関してタイプ分けを行なった結果,価値観と効力感が均衡している幼児(均衡群)と,不均衡の幼児(不均衡群)の2タイプがあること,3歳時点での認知の個人差によって,4歳時点での向社会的行動に差異があること,が示された。3歳時点で価値観と効力感が均衡している幼児は,4歳時点で仲間の援助に成功する回数が多い傾向にある。認知均衡群の幼児は,3歳時点では自発的援助を行なう傾向があり,4歳時点になると困窮場面での援助方略数(援助成功回数)が多い。一方で,不均衡群の中でも,価値観の方が高い幼児は3歳時には依頼に応える援助を多く行なう傾向が,効力感の方が高い幼児,3歳時には仲間と一緒に援助をおこなう傾向があるが,両者とも,4歳時には援助成功回数が少なく,援助に失敗した場合,新たな援助方略を試みるよりも場面から退去する傾向にある。 以上の結果から,向社会性についての認知と向社会的行動は関連していること,さらに向社会性についての認知の個人差によって向社会的行動の発達過程が異なることが示された。
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