Research Abstract |
本研究の目的は,自宅を離れた遠隔地,または外国において新たに学生生活を始める大学生,大学院生等に見られる不適応感や,行動の不適合等の様態の推移について調査・分析し,有効な対処法とその教育法を案出することを主眼とする。このため,日本国内の複数大学のみならず,海外,とりわけ近年になって学生の交流が著しい東アジア圏の大学に在学する学生を対象に,いわゆる「カルチュア・ショック」体験について調査を行う計画を立てている。 本年は,早稲田大学において文献の調査を行った。また,調査に必要な質問項目を策定するとともに,質問項目の中国語版と韓国語版への翻訳を,それぞれ中国と韓国出身の大学院生に依頼し,行った。並行して統計的処理の概略について,大学院生に検討させた。また,研究代表者と研究分担者1名が韓国の国立釜山大学の国際交流部および社会科学部心理学科の安教授を訪問し,調査の実施時期,方法等について調整した。その際,安教授から,韓国の大学の特殊性についてコメントをいただいた。それらのコメントを質問項目に反映するべく,検討中である。韓国の新学期は3月であるので,4月ないし5月に1年次生と2年次生以上を対象に調査を実施することになった。中国における調査については,調査対象大学と交渉中である。このほか,アメリカ合衆国,ヨーロッパの大学における調査の可否について現在検討中である。 研究費の主要な使途として,上記の出張を行ったほか,韓国と中国の大学生にかかわる文献の収集につとめるとともに,聞き取り調査等において使用する録音機を購入した。コンピュータ上で多言語を取り扱う必要性があり,新規にワードプロセッサ・ソフトウェアを購入した。 「近代」掲載論文(「約束とコミュニケーション」)において,環境の斉一性が失われる場合に異文化適応の問題が生じることを,コミュニケーション論の領域から考察した。
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