Research Abstract |
脳血管障害に伴って生じる失語症では,話すことの他に,聞く,読む,書くことが障害され,スムーズなコミュニケーションが困難になる。その結果,コミュニケーションの問題だけでなく,心理社会的側面の弊害も生じる。心理社会的問題の解決のために,地域のボランティアを失語症会話パートナーとして養成し,失語症者へのコミュニケーション支援を担わせる方法がある。しかし失語症会話パートナーのコミュニケーション方法に関する評価法が確立されていないため,会話パートナー養成講習会などを実施しても,その効果判定は困難である。そこで,本研究では失語症会話パートナーのコミュニケーション評価法を開発することを目的とした。 今年度は,まず重度失語症者と会話パートナー間での,日常生活におけるコミュニケーションの実態を調べるために,非言語的な手段使用に関して,量的な分析と,より詳細な質的分析を行った。対象とした重度失語症者は3名であった。その結果,言語機能の制限が大きい失語症者ほど,相互交渉を続けるために,パートナー側の役割の意義が大きくなること,また会話の停滞場面を解決するにあたっては,パートナー側の対処法が重要であることが明らかになった。 さらに「失語症会話パートナー養成講座」に参加した会話パートナーを対象に,失語症者とのコミュニケーション場面を設定し,既存の評価法(Garretら,1992)を用いて,コミュニケーションの様子を比較検討した。本評価法は,抽出したコミュニケーション場面に合致するように一部を修正して使用した。その結果,失語症者と関わる時の具体的技法は,講座後のコミュニケーション場面に活かすことが可能であったが,臨機応変な対応については,更なる学習と経験が必要であると考えられた。このような既存の評価法を,わが国の実態に合わせて修正して使用することも有益であると思われた。
|