2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会・文化的視点に立った聴覚障害児・者の臨床心理的支援システムの構築
Project/Area Number |
16530455
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
滝沢 広忠 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (40118112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥越 隆士 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (10183881)
河崎 佳子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (70234119)
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Keywords | 聴覚障害児・者 / 臨床心理的支援 / 精神病院 / ろう学校 / 更生施設 / 身体障害者授産施設 / 臨床心理士 |
Research Abstract |
精神科で治療を受けている聴覚障害患者の実態を明らかにし、さらにろう学校、更生施設、身体障害者授産施設での心理的支援活動の取り組みについて紹介した。その概要をまとめると以下のようになる。 (1)聴覚障害者のための医療機関や心理相談機関は少なく、この分野の仕事に携わる専門家も少ない。また手話通訳者を利用する患者はいるが、手話通訳者を医療スタッフとして導入している医療機関はまれである。 (2)聴覚障害者はコミュニケーション能力が不十分なため、適切な学習の機会が得られず、円滑な対人関係を結ぶこともむずかしい。そのため他者に依存する傾向があり、内的生活が希薄で、成人になって社会に出てからさまざまな不適応を起こすことがある。 (3)彼らは自分の実存を問うことが少なく、自己肯定感を持ちにくい。したがって、カウンセリングで自分の過去や内的体験を語ることは彼らの自己理解を深めるのに役立つ。特に集団による聴覚障害者同士の話し合いは、自分の障害について認識を深めるとともに、自分を内省する契機となる。集団療法的かかわりは、孤立しがちな彼らの主体性を促進する効果もある。 (4)聴覚障害児をかかえた同じ境遇の養育者に対する心理的支援も重要な意味をもつ。 (5)コミュニケーションを保障し心理的支援を行うことは、聴覚障害者のアイデンティティを確立する意味がある。 (6)聴覚障害者を健聴者の世界に適応させるというより、健聴者が聴覚障害者の体験世界を理解しながら寄り添っていくかかわりも大切である。 (7)精神科、心理臨床、精神保健福祉などの専門家が聴覚障害者の心理的な問題に対して適切に対応できる知識や技術を身につける必要がある。
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Research Products
(7 results)