2005 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期の記憶と出生直後の学習が母親と父親への愛着をいかに形成するか
Project/Area Number |
16530468
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
兒玉 典子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50127007)
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Keywords | 胎児 / 新生児 / 愛着形成 / 記憶 / 学習 |
Research Abstract |
今年度は、まず、昨年度の実験データを補充した。Slc:ICRマウスを用い、妊娠17日(満期出産の2日前)の羊水と出産当日の母乳を採取し、これらに対する帝王切開された胎児の反応をビデオに録画し、その特徴を検討した。母親の体毛で作ったブラシに羊水あるいは母乳を浸し、それを複数回提示したところ、羊水に対しては胎児の開口運動が増加したが、母乳に対しては鈍い反応しか現れなかった。これは、昨年度のデータと基本的には一致した。羊水の提示後に母乳を複数回提示されると、羊水のみの提示と同様に反応は高まった。このことは、出生直後の母親への愛着が胎児期に慣れ親しんだ羊水への選好を基本としており、出生後に羊水と母乳との対提示によって連合学習が成立し、それが母親への愛着形成へとつながっていくことを示している。ただし、胎児の運動の種類によってはデータの安定性が十分に保証されるには至らなかったため、次年度にも、さらにデータの補充が必要である。 次に、帝王切開された胎児の口周部に父親の体毛で作ったブラシを提示し、それに対する反応を検討した。その結果、母親の体毛で作ったブラシと同様の反応が認められた。父親の体毛には母親よりも硬いガードヘアが多く刺激自体はより強くなると考えられるが、実験の結果差は認められなかった。この実験は、来年度にはもう少し細かな検討を加えてさらに洗練していく必要がある。 最後に、出生後2日齢の新生児を用い、新生児を両親から離した後に両親へのネンブタールで麻酔を行った。麻酔された父親と母親を観察装置に入れ、新生児をその装置のスタートボックスに置き、新生児が父親へ接近するか否かを観察した。その結果、新生児は両親に対してほぼ同じような選好を示した。この実験は、来年度への予備実験として計画したものであり、引き続き両親に対する新生児の反応の差異を検討することを予定している。
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Research Products
(1 results)