2004 Fiscal Year Annual Research Report
小児の注意欠陥多動性障害の成因に関する実験心理学的手法による神経行動科学的分析
Project/Area Number |
16530470
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杉岡 幸三 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (90112127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡市 広成 同志社大学, 文学部, 教授 (40066288)
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Keywords | 多動性 / 馴致遅延 / 空間認知障害 / 海馬 / 小脳 / 発生学的形態異常 / メチルアゾキシメタノール / 実験的小頭症 |
Research Abstract |
小児の注意欠陥多動性障害(ADHD)の成因を探るために、ラット胎生期メチルアゾキシメタノール(MAM)投与によって、海馬もしくは小脳の発生学的形態異常を有するADHDモデルを作成し、これらの動物が示す行動異常と神経学的所見との相関を求めた。 胎生15もしくは19日MAM投与動物(MAM-15およびMAM-19群)について、1)離乳期および成体期にオープンフィールド(OF)および飼育環境事態での活動性を赤外線センサーを用いて測定したところ、OF事態ではどの発達時期においても活動性は対照群と異ならなかったが、飼育環境事態ではどの分析時期においても、暗期でMAM-15群は多動傾向、MAM-19群は活動性の低下傾向を示した。これらの群間の差異は、雄性ラットに比して雌性ラットにおいて顕著であった。2)MAM-15群の離乳期および成体期に、5分毎に室内光が明暗する視覚性環境刺激変化に対する馴致過程を同様な装置を用いて分析したところ、どの発達時期においても対照群と比べてMAM-15群は馴致の遅延傾向を示した。これらの群問の差異は、雄性ラットに比して雌性ラットにおいて顕著であった。3)放射状迷路事態で、4走路に報酬を呈示する場所課題では、MAM-15群は参照および作業記憶ともに顕著な空間認知障害を示し、MAM-19群も軽度の空間認知障害を示した。手掛かり課題では、両群とも対照群と異ならなかった。 MAM-15群で観察された多動傾向、馴致遅延(注意欠陥)および空間認知障害は海馬の発生学的形態異常(海馬CA1に特異的な錐体細胞の拡散および異所性の錐体細胞の集塊)と、またMAM-19群で観察された行動異常は小脳前葉の葉形成の発生学的形態異常とそれぞれ相関していると考えられ、これらのことは、ADHD発症がこれの脳部位の発生学的形態異常と関連している可能性を示唆するものである。
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Research Products
(3 results)