2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における感化教育の特質-留岡幸助が収集した欧米情報を中心に-
Project/Area Number |
16530504
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
二井 仁美 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (50221974)
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Keywords | 留岡幸助 / 家庭学校 / 感化教育 / 監獄 / 内国伝道 / ボーデルシュヴィング / ベーテル / ヴィッヘルン |
Research Abstract |
本研究は、近代日本の感化教育に画期をもたらした留岡幸助(1864-1934)がいかなる欧米情報を収集したかに焦点をあてながら、近代日本の感化教育の特質を解明することを目的としている。具体的な方法として、留岡による二度の海外視察に焦点をあて、留岡が視察した欧米の社会施設のありようをみることで、近代日本の感化院の教育方法の特質を論じようとするものである。 本年度は、北海道家庭学校に原本があり、同志社大学人文科学研究所にその影印本が所蔵されている.「留岡幸助日記・手帖」の内、留岡幸助が欧米の監獄事情の研究を開始した北海道空知集治監教誨師時代の1891年から二度目の欧米視察後にあたる1905年に記された90冊を分析し、留岡幸助が注目した欧米の各種社会事業の特徴を検討した。あわせて、北海道家庭学校が所蔵する留岡幸助発信書簡の整理を進めた。その結果、二度目の海外渡航先から留岡が妻菊子に宛てた絵葉書のなかで、ドイツのビーレフェルトの総合的な福祉施設ボーデルシュヴィング施設団ベーテルを視察した際に留岡が受けた感銘深い記述を発見することができた。これは、既往の留岡幸助研究では知られていなかったものであり、2004年秋に開催された北海道家庭学校創立90周年記念式典において、パネルおよび機関誌『ひとむれ』への投稿によって、その資料を紹介すると共に、ベーテル関係資料調査を試みた。ボーデルシュヴィングは、社会福祉に貢献するキリスト教徒奉仕者であるディアコーンを養成しながら、総合的な社会事業を展開した人物である。家庭学校創設に際してその理念的拠り所として敬意を抱いたラウエハウス創設者ヴィッヘルンと共に、ボーデルシュヴィングはドイツにおけるキリスト教徒による社会改良「内国伝道」の推進者である。このことは、留岡における感化教育構想が、感化教育にとどまらない拡がりを有した社会改良との関係を示唆するものであり、また、その発想は底流において「内国伝道」という共通の水脈を有するのでないかという仮説を導くものである。
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Research Products
(1 results)