2005 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における感化教育の特質-留岡幸助が収集した欧米情報を中心に-
Project/Area Number |
16530504
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
二井 仁美 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (50221974)
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Keywords | 留岡幸助 / 家庭学校 / 家庭学校北海道農場 / 感化事業 / コロニーシステム / ヴィッツヴィル殖民監獄 / クルップ社企業内福利制度 / ボーデルシュヴィング複合施設ベーテル |
Research Abstract |
本研究は、近代日本の感化教育に画期をもたらした留岡幸助(1864-1934)がいかなる欧米情報を収集したかに焦点をあてながら、近代日本の感化教育の特質を解明することを目的としている。 今年度は、具体的方法としては、「留岡幸助日記・手帖」(原本北海道家庭学校所蔵、影印本同志社大学人文科学研究所蔵)と留岡による欧米での収集文献(東京家庭学校蔵)における、1903年から1904年にかけての欧米訪問時の記録を分析し、とくに、1914年の「家庭学校北海道農場」開設時に、留岡が、そのモデルとして参照したと述べた「コロニーシステム」とは何であったのかに注目して考察した。 彼は、6ヶ月の欧米旅行中、少年裁判所、感化院、監獄、感化監獄、図書館、公園、視聴覚障害児のための学校、収容所、企業など多様な施設を視察した。これらの施設の内、「コロニー」としては、ドイツのビーレフェルトにあるボーデルシュヴィング複合施設ベーテル、エッセンの鉄工業を営む巨大企業クルップ社による企業内福利事業、スイスの「強制労役場」ヴィッツヴィル殖民監獄における営みを視察した。ベーテルやヴィッツヴィルは、施設形態としての「コロニー」、クルップ社の場合は「社宅村」という意味での「コロニー」であったが、いずれも社会主義の台頭を避けようとする意図を孕むものであった点で共通性を有していた。 これらのなかで、ヴィッツヴィルこそが留岡のコロニーシステムのイメージ形成において、興味深い施設であった。ヴィッツヴィルは、軽犯罪者を対象とする施設であったが、(1)取り囲む海や高い塀などがなく自由な空気のなかで職員と収容者が共に生活し、自然のなかで共に働くことを重視していたこと、(2)経営としての独立を目指していたこと、(3)拘禁装置を備えていなかったが地理的条件において拘禁機能を有していたこと、などに留岡が注目した特徴があった。 以上、家庭学校北海道農場開設に連なる留岡による欧米情報収集の様態を検討した。
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Research Products
(2 results)