2004 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国における近年の進歩主義教育評価の研究
Project/Area Number |
16530530
|
Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
甲斐 進一 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (40065040)
|
Keywords | デューイ / キルパトリック / カールスン / バン・ティル / バイネキー / 進歩主義教育 / 児童中心主義 / 社会改造主義 |
Research Abstract |
本研究は、デューイ、キルパトリックらを主要メンバーとする進歩主義教育のアメリカ合衆国での近年の評価の動向を考察し、進歩主義教育がポストモダンの現代においても評価される側面の解明を目指している。日本では、進歩主義教育は、自ら学び自ら考える力、豊かな人間性を意味する「生きる力」の育成を唱え、完全学校週5日制、総合的な学習の時間、教育内容の3割削減等の方策をもたらした新学習指導要領の理論的支柱となっているといわれている。しかし、新学習指導要領は学力低下をもたらしたと批判され、見直しを迫られている。進歩主義教育が学力低下の元凶という批判は妥当ということができるか。 この問題意識の下で、本年度は、研究成果を第I論文「社会改造主義としてのキルパトリック」(平成16年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書)、第2論文「進歩主義教育評価の動向」(椙山女学園大学研究論集第36号社会科学篇、2005年3月)、第3論文「カールスンの進歩主義論」(前掲報告書)の3点にまとめた。第I論文は、プロジェクト・メソッドの提唱者と知られ、児童中心主義者、穏健派リベラルと位置づけられたキルパトリックが、社会改造主義者としての側面を1920年代以降に顕著に表明するようになったことを明らかにした。第2論文は,進歩主義教育協会の解散(1955年)と協会の学術誌の廃刊(1957年)によって進歩主義は廃れたという見解に疑義を呈したバン・ティル、バイネキーの所論を考察し、進歩主義の今日的意義を考察した。第3論文は、進歩主義の意味を、デューイ的な狭義の進歩主義の他に保守的立場に立つ経済的進歩主義、訓練的進歩主義、過程進歩主義にまで拡大しているカールスンの進歩主義論を考察し、ポストモダンにおいて統一の政治学と分裂の政治学の中間に位置しうるデューイ的な民主的進歩主義論が有望な立場であることを解明した。
|
Research Products
(6 results)