2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530547
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉谷 武志 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (60182747)
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Keywords | 市民教育 / 欧州審議会 / EU / 異文化間教育 / 多文化社会 / 多文化教育 / ヨーロッパ / 民主的市民教育 |
Research Abstract |
今日、多文化社会が現実のものとなったヨーロッパ各国は、国内の多様な言語、宗教、生活習慣をもつ「国民」を、平和で民主的な社会の構成員として、つまり「民主的な市民」として再編成し、安定した社会を再構築する必要性を強く認識し、その努力を続けている。「民主的市民教育」は戦後最初に創設された在欧国際機関である、欧州審議会(Council of Europe)が、こうした社会の再統合のための最大の課題の一つとして推進している政策課題である。 最終年度である本年度は、過去3年間の調査研究、現地調査を総括し、報告書を作成した。特に、「民主的市民教育」について、プロジェクトの創設(1997年)までの政策動向、第1期(1997〜2000年)、第2期(2001〜2004年)、そして「欧州民主的市民教育年」"Year of Democratic Citizenship through Education"の経過と、第3期(2006〜2009年)への新たな課題の設定まで、その現状と今後の見通し等について、欧州審議会の資料と現地インタビューなどを通して、総体的にそれを明らかにした。 国際機構としての欧州審議会は、加盟46カ国それぞれの国内事情や経済、社会の特徴に配慮しつつ、「民主的市民教育」政策を推進することで、宗教、言語、生活習慣等様々な多様性、多文化化の中で、時として各加盟国が旧来型のネーション・ステートの構成員である市民(国民)を求めようとするのに対して、多文化社会において、民主的で、法的手続きに則り、しかもその多様性に対してトレラントでもありうる「民主的市民」を対置して、新たなヨーロッパ社会と人間像の方向性を示している。こうした動向は、アジア的な「民主的市民」を構想し、平和なアジア地域社会を実現すべき日本にも、大きな示唆を与えるものとなっている。
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Research Products
(1 results)