2004 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける「教育と福祉」協働システムの社会的公正戦略における効果性
Project/Area Number |
16530548
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
岩橋 法雄 鹿児島大学, 医学部, 教授 (20108971)
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Keywords | education / educational action zone / social exclusion / social inclusion / welfare-to-work / NEET / social justice / イギリス教育 |
Research Abstract |
ブレア労働党政権発足以来、「教育、教育、教育」と唱導し、福祉依存の体質を改善し、「働くための福祉(Welfare-to-Work)」戦略を推進してきた。ここでは、学校での教育水準の改善が志向され、獲得されるべき教育資格が職業資格へと連動していくことが企図された。これらは、ナショナル・カリキュラム、アカデミック及びボケイショナル資格の統合、教育アクション・ゾーンの設定と優先的リソース、ジョブ・センターを核に職業斡旋と職業教育(再訓練)の連動プログラムといった施策に象徴される。 しかし、明らかになってきたことは、「貧困」(poverty)及び「社会的排除」(social exclusion)の定義の問題を超えて、事実として階層分化は拡大し、貧困は増加しているということである。例えばPSE(Poverty and Social Exclusion Survey of Britain 2000)の指摘によれば、1980年代、90年代を通じて賃金水準から見てもより豊かになった。99年の時点でもその上昇水準の比率は緩やかになったとしても傾向は同じである。しかし、99年時点での誰もが共通に所持しているべき生活必需品(necessities)、例えばビデオや食器洗い機などなどはもはや1983年、1990年時点での「贅沢品」(luxuries)では無くなっている。それらがあって当たり前の生活スタイルであり、それが充足されることが普通の生活主体者としては前提の労働生活である。このような社会状況の中で獲得される賃金(確かに絶対的には上昇)では「普通の」生活水準の維持が難しくなっている事実が明らかになってきているといえよう。2004年時点では、この傾向がさらに顕著であり、働くための福祉、さらには働くための教育施策はその傾向に追いついていない。毎年10%以上が、義務教育を終えて(16才で離学)進学もせず、就職もせず、職業訓練も受けていない青年(ニート:Not in Education, Employment or Training)が産まれ、増加している,あらたにいっそう地域重視で打ち出されたニート対策は、「働くための福祉」しいては「働くための教育」という戦略が「社会的公正」を保持するためにこそ必要な社旗的生産力改善の方策であると位置づけてきた、イギリス労働党政権の死活の問題といえよう。
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Research Products
(1 results)