2005 Fiscal Year Annual Research Report
「感情」の社会化に関する総合的研究:「文化としての涙」の形成過程に着目して
Project/Area Number |
16530553
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
北澤 毅 立教大学, 文学部, 教授 (10224958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 弘 立教大学, 文学部, 教授 (90162114)
佐々木 一也 立教大学, 文学部, 教授 (70215713)
小山 真紀 立教大学, 文学部, 教授 (10251597)
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Keywords | 感情 / 社会化 / 泣き / 文化 |
Research Abstract |
本共同研究におけるテーマは、感情(主に「泣き))をめぐって、(1)発達・社会化、(2)文化的規範(ジェンダーなど)、(3)人間関係(解釈学の視点から)、(4)情操教育(音楽教育の歴史と現状)の観点に大別される。(1)については、一昨年度より実施中の乳幼児の泣き場面を中心としたフィールドワークに基づくデータ分析を継続し学会報告を行なった。また、共同研究の利点を活かし(2)(3)(4)との接点を模索するべく、新たに「人間は記憶の中で泣く」という仮説のもとで文献の共同講読をしつつ考察を深めてきた。記憶論の検討とは別に、(2)については、Freyらの文化人類学的研究におけるジェンダーについての知見を検討し、泣きをめぐる性差を作るメカニズムや不均衡な力関係に目を配るという研究方針を深めてきた。(3)については、泣くという感情表現がなぜ笑ったり怒ったりなどの他の感情表現と比べて他の人々の行動に及ぼす影響力が強いのかという問題を解釈学の方法を用いて哲学的に検討した、「関係性としての涙-泣くことはどのように人間関係を制禦するか」(佐々木,2006,文献情報は次頁参照,以下同様)を業績として提出した。人は他の人との間に相互に自己の存在を委ね合う関係を持っている。その関係には強者と弱者という力関係が、裏表の二つの意味を持って機能している。本論文では泣きがその関係をその二つの意味において不安定にするメカニズムを検討し、泣くという行為が他者に対して統制力を持つ理由を究明したものである。また、(4)のテーマについては、音楽教育の歴史を評価の観点から検討した、「戦後60年・授業と評価の動向-『指導と評価の一体化』を手がかりに」(小山,2006)などや、学力と評価の現状を「かかわり」の視点から捉え直した「かかわりとしての音楽・学力・評価」(小山,2005)、および、五線譜という記述方法が表そうとしてきた音楽体系を検討した、『五線譜の約束』(小山ほか,2006)を、(4)のテーマの基礎的研究業績として提出した。
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Research Products
(7 results)