2004 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーションの2つのスタイル-新たな選択肢としてのフランスの小学校の市民教育と国語教育
Project/Area Number |
16530558
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
渡辺 雅子 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 助教授 (20312209)
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Keywords | 比較教育 / 比較文化 / 国語教育 / 知識社会学 / コミュニケーション論 / 市民教育 |
Research Abstract |
3年間のプロジェクト初年にあたる本年度は、調査対象校になっている3つの異なる学校(私立のカトリック学校・公立の伝統校・移民の多い特別指定地域校)のうち、カトリックの私立小学校でのインタビューとリヨン市6区の教理教育責任者と教理教育実践者へのインタビュー、及び今後の調査の交渉を行なった。 カトリックの私立小学校校長のインタビューからは、学校というひとつのシステムの中でいかに異なる価値観を教えるか、またそれに伴うコミュニケーション方法が伝えられるかについての知見が得られた。国のカリキュラムで義務付けられている「市民教育」と、私立の学校でのみ教えることの出来る「宗教教育」は日本の「公民」や「道徳」に相当する教科であるが、明らかに矛盾する価値観を教える教科である。それらを教える際には、まずどちらを優先させるかという明確なプライオリティーをつけること、2つが異なった領域を扱うものであることを様々な実践を通して児童・生徒に伝えることが重要である、とのことであった。それによって、矛盾する価値観の使い分けが子供にも可能になるのである。 「市民教育」が法律を基本原理にしているのに対して、「宗教教育」は神の言葉が基本原理となる。 しかし、私立のカトリック学校と雖もまず「市民教育」の原理が優先されること、そして宗教が教えられる場合には、担任教師でなく教理教育の実践者によって異なる場所で少人数のグループで行なわれること、すなわち学校の日常と切り離されて教育が行なわれる努力が明らかになった。「市民教育」と「宗教教育」では、公的(パブリック)と私的(プライベート)なコミュニケーション方法を使い分けられる訓練が行なわれ、異なるタイプの社会化が行なわれている。伝統的な集団活動と個人化など矛盾する価値観を取り入れなければならない現代の学校が学ぶべき点は多い。
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Research Products
(2 results)