2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530558
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
渡辺 雅子 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 助教授 (20312209)
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Keywords | コミュニケーション / 思考表現スタイル / 市民教育 / 国語教育 / 知識社会学 / 歴史教育 |
Research Abstract |
プロジェクト最終年にあたる今年度は、3年間のリヨン市での調査のフォローアップとして、市民教育と国語教育を中心に繰り返し扱われるテーマ、「フランス革命の遺産はどう解釈されるか」、そしてそれはコミュニケーションスタイルにどう影響するか」を探るべく、歴史教育でフランス革命はいかに教えられ、市民教育にどのようにその精神が受け継がれるか、そしてそれはいかに生活の場でコミュニケーションの型として実践されているかの調査を行なった。具体的には、Ecole Andre Philip校で、校長のMme.Delasseauxのフランス革命の歴史授業とその延長としての市長舎の社会見学を観察した。さらに2006年の新しい移民法により国外退去を命じられた同校の移民の子どもを守るべく教師と保護者が組織したデモ活動と、それをサポートしたコミュニティーの「共和国受け入れの儀式」に参加し、それらに関わった様々な人々へのインタビューも併せて行った。子どもの社会化を形成する3つの基本制度-学校、家庭、地域社会-を通して、社会環境がいかにコミュニケーションスタイルに影響を与えるかを総合的に捉える機会を得た。 フランスのコミュニケーションを支えるのは、「儀礼」と「革新」という2つの相反する精神である。それは教会による長い間の統制と、フランス革命という市民革命を経たフランスの歴史的背景に負うところが大きい。市民教育ではルール遵守を学びながら、それらは状況に応じて変るべきものであることを学ぶ。また政治システムを学んだ後、現行のシステムやそこから生まれる法律や条例が公正(juste)かどうか、そうでないならばいかに変えなければならないかを討論で検証する。そこから「抵抗する精神」を養い、歴史に依拠しつつ、帰納と演繹両面から問題検討を行う議論の形式を習う。理知と感情、帰納と演繹、実利と象徴といった2項対立的相違を分析的に習い、どちらかを切り捨てるのではなく、ものごとの複雑性を受けとめつつ、「統合」して全体性を見通そうとする思考法とその表現スタイルが観察された。
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Research Products
(4 results)