2004 Fiscal Year Annual Research Report
ポピュラー音楽学習者の聴取による音楽学習プロセスの解明と学校音楽教育への応用
Project/Area Number |
16530583
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
杉江 淑子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30172828)
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Keywords | ポピュラー音楽学習 / ポピュラー音楽バンド / 聴取 / 耳コピー / 読譜能力 |
Research Abstract |
音楽科教育においては楽譜を使用した音楽学習が自明の方法とされるが、そのために、読譜が一つの障壁となって音楽から距離を置いてしまう者も存在する。また、楽譜が優先されすぎると、音楽活動において重要な「聴く」能力が育ち難いという弊害もある。音楽科教育においては、「聴取によって音楽をとらえる力」を育成する効果的な方法を研究開発する必要がある。そこで本研究では、聴取しコピーすることを有効な音楽への接近手段としているポピュラー音楽学習者に着目し、彼らが実際に聴取によって音楽の構造を把握し、自身の演奏をつくりあげるプロセスを解明して、学校音楽教育における応用可能性を検討することを目的にしている。本年度は、アマチュアのポピュラー音楽バンドの練習過程を新曲習得初期の段階から完成段階まで断続的にビデオ収録し、原曲をどのように聴きとっていくのか、互いの音をどのように聴き合い、どのように修正していくのかについて分析・考察した。さらにビデオ分析と併行して、調査対象となったバンド活動者に収録ビデオを観てもらいながら、インタビューを行った。その結果、調査対象のポピュラー音楽バンドの場合、新曲を習得する際の楽譜への比重の置き方は各自の読譜能力に応じて異なるが、原曲(CD)を聴くことを重視するという点では共通であり、特に読譜能力に自信のない者にとって、「聴くこと」がその音楽の全体像をつかむためだけでなく、どこでどのような和声を使うか、どのような音色やテクニックを使うか等を決定していくにも重要であることが示唆された。また、合わせる過程で互いの音を聴き合う活動が継続的に行われており、そこでの耳を使った集中度の高さが観察できた。このことはメンバーへのインタビューを通しても確かめられた。次年度はバンドの観察を継続するとともに、そこでの学習方法がどのような形で学校音楽教育に応用可能かについて研究を進める予定である。
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