2005 Fiscal Year Annual Research Report
ポピュラー音楽学習者の聴取による音楽学習プロセスの解明と学校音楽教育への応用
Project/Area Number |
16530583
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
杉江 淑子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30172828)
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Keywords | ポピュラー音楽学習 / ポピュラー音楽バンド / 耳コピー / 聴取 / 読譜能力 / 音楽学習方法 / 学校音楽文化 |
Research Abstract |
「耳で聴いてコピーする」ことは、ポピュラー音楽活動者が最優先する音楽学習の方法であり、インフォーマルな場では多くの若者にとってもごく自然な音楽把握の方法であるにもかかわらず、学校教育の中では正統な音楽学習方法とは位置づけられていない。そのために、この方法を音楽把握の専らの手段とする者が、学校教育が求める音楽の学習方法に大きな違和感を抱くことは想像に難くない。「学校音楽文化」に対する違和感は、教材や活動の種類といった学習内容(What)だけではなく、音楽学習の方法(How)における齟齬からももたらされると考えられる。本研究では、若者のインフォーマルな音楽学習プロセスを解明するために、アマチュア・ポピュラー音楽バンドの練習プロセスの観察、分析、インタビューを中心に研究を進め、理論的な考察を加えた。研究の結果、ポピュラー音楽バンドのメンバーは、音楽の授業で採用される学習方法とは異なった方法で音楽にアプローチし、めざす音楽表現を実現しようとしており、そこに彼等なりの音楽的力、即ち「聴く力」「真似る力」「表現を工夫する力」の獲得、向上がみられることが明らかとなった。言い換えれば、音楽の学び方に単一の絶対的に優れた方法があるとはいえないことが示されたのである。したがって、自らの音楽の理解や把握の仕方と異なった学習方法を教室の中で提示された生徒が、教室での方法の必然性を了解できずに、学校での音楽学習に距離感を抱く可能性は充分に予想できる。このことから、B.バーンスティンが教育の実践過程を知識の内容(What)と知識が伝達されるあり方(How)の2つの概念から説明したように、学校音楽教育に関しても、学習内容だけでなく、生徒の日常レベルでの音楽理解や把握の方法と学校の授業における方法との間にどのような相違・距離があるかという、学習方法についての視点を加えて実践過程をとらえることが必要である。
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Research Products
(1 results)