2004 Fiscal Year Annual Research Report
小・中学校におけるピアノ調律法改善研究--不等分平均律(複合純正律)の開発と導入
Project/Area Number |
16530600
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岸 啓子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (40036489)
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Keywords | 音律 / 調律法 / ヴェルクマイスター第3法 / 12等分平均律 / 純正音程 / シントニック・コンマ / スキスマ / 長短調 |
Research Abstract |
本研究は「ピアノにあわせて歌うとハモらない」と言われる原因となっている12等分平均律の欠点を修正し、教育現場に最適の音楽的音律を、歴史的調律法を参照しつつ案出することを目的としている。 1、小中学校音楽歌唱・器楽曲における調の出現割合と特色 音律は音楽と不可分であり、教育現場に最適の音律とは教材に最適な音律を意味する。日本音階・教会旋法を除く小中学校教科書の歌唱・器楽曲240曲の調性を分析判定し、分布特性を調べた結果、出現する調は長短各6調に限られ、しかも、ハ長調・ヘ長調・ト長調の上位3調の合計が74%に上ることが判明した。この事実に基づき、24全ての長短調への適合性を第一義とし、純正な協和比を捨てた12等分平均律を使用する根拠がきわめて薄弱であること、教材によりよく適合した音律の考案・導入が必要であることが明らかとなった。 2、上の調性分布特性から導き出される音律の条件は以下の通りである。 ・♯、♭それぞれひとつまでの調に最も調和的であること。 ・♯2つ、♭3つまでの調によく適合すること。 ・黒鍵は出現頻度を考慮して音律的にはCis,Es,Fis,As,Bとするが、異名同音使用にも耐えること(特にGis)。 ・声域等の制約により移調も想定されるので、ヴォルフのない音律であること。 ・旋律的表現力を考慮し純正長3度より狭い3度(例ウェルテンパー384セントのCE)を回避すること。 以上の条件に照らし、現段階ではヴェルクマイスター第1技法第3法、ヴァロッティ=ヤング6分の1を中心に望ましいピアノ音律を検討している。ヤング6分の1調律によるピアノのC音で第5倍音を確かめたところ(平均律によるピアノとは異なり)、e音開放弦の共振が確認できた。音律により音階上の各音のピッチが異なるだけでなく、ピアノの響き方自体も異なってくる一例である。 しかし音律理論をそのまま楽器に展開できるチェンバロとは異なり、ピアノには固有の倍音特性や調律曲線の問題があるため、今後はそのような特性も十分考慮にいれつつ最適の音律・調律法を考えてゆきたい。
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