Research Abstract |
1.調査研究 茨城県・千葉県・埼玉県内の学校293校の生徒指導主事および養護教諭を対象に,「小中学校における特別な支援が必要な児童生徒への対応に関する調査」を実施した。その結果,209校(回収率71%),内訳は小学校生徒指導主事134人,小学校養護教諭137人,中学校生徒指導主事72人,中学校養護教諭72人から回答を得ることができた。そこでの調査内容及び結果や考察は,回答校に情報提供するとともに,日本LD学会第14回大会において発表した。 1)生徒指導主事や養護教諭の立場で軽度発達障害の児童生徒に十分対応できない理由 LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対して,生徒指導主事や養護教諭として十分対応しているかを聞いた。その結果,小学校生徒指導主事134名中73名が『どちらとも言えない』,47名が『思わない』で合わせて約90%だった。また小学校養護教諭は,137名中79名が『どちらとも言えない』,37名が『思わない』で約85%だった。中学校生徒指導主事では,72名中38名が『どちらとも言えない』,31名が『思わない』で約96%,中学校養護教諭は72名中45名が『どちらとも言えない』,20名が『思わない』で約90%だった。『どちらとも言えない』『思わない』といった,対応を十分にしていないと回答した四者の自由記述内容をカテゴリー毎に分析した。それによると,小中学校の生徒指導主事の第一の理由は,「障害理解が不十分である」という内容であった。一方,小中学校の養護教諭の第一の理由は,「学年や学級で対応するため」であった。 2)不登校や非行の原因として軽度発達障害を実感する理由について この設問では,不登校や非行,不適応の原因として,軽度発達障害の問題が根本にあると実感したことがあるか聞いた。その結果は,小学校生徒指導主事134名中21名が『実感したことがある』,65名が『少しある』で合わせて64%だった。また小学校養護教諭は,137名中26名が『実感したことがある』,68名が『少しある』で合わせて66%だった。中学校生徒指導主事では,72名中16名が『実感したことがある』,42名が『少しある』で81%,中学校養護教諭は72名中20名が『実感したことがある』,37名が『少しある』で79%だった。四者とも「対人関係や社会性の問題から実感する」「学習場面や学習の遅れから実感する」との回答数が非常に高かったが,中学校生徒指導主事は,「過去の事例と比較して感じた」という回答数が一番高かった。この結果は他の三者にも多い回答数であった。以上のことから,生徒指導主事や養護教諭は,LD等の軽度発達障害に関する十分な知識がなくても,対人関係や学習場面等の気づきからその疑いを抱いたり,あるいは過去の事例や他の教員の指導事例といった経験を通して感じていることが推測され,LD等の軽度発達障害に関する知識は,研修や書籍から学ぶだけでなく,ケース会議や事例検討といった校内研修等が重要であると思われた。
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