Research Abstract |
1.導電方程式に対する境界値逆問題において,局所化されたDirichlet to Neumann mapから、導電係数およびその境界法線方向の微分を,弱形式として再構成する問題に対して、数値実験で実現化を行った.これは,導電体の表面のある部分において,電気変位と電流を局所的に測定することで,その表面近くでの導電率を決定する境界値逆問題の数値シミュレーションである.弱形式での再構成とは,与えられた密度関数と導電係数との合成積を再構成することであり,導電係数の値がごくわずかの領域で変化する場合に,導電係数自身の再構成よりも,インピーダンストモグラフィーの現場では実際的である.ここでの数値シミュレーションは,境界での導電係数を再構成し次にその値を使って境界法線方向の微分の値を再構成するという従来の帰納的再構成ではなく,Dirichlet to Neumann mapから直接,微分値を再構成する公式に基づくもので,数値的にも高精度で,効率の良い再構成方法であることが検証された. 2.保存則方程式の初期値問題の弱解は、初期値が滑らかな関数であっても,有限時間内にshock(不連続性)を有する.そこで、スカラー保存則方程式中の流れ関数を未知とし,解のshockを観測することで,流れ関数を同定する逆問題を考察した.第一に、コンパクト台の任意の初期関数を与えたとき,2つの流れ関数から生じた解のshockが,十分時間が経った後,一致すれば,ある有限の区間上で,流れ関数も一致することを示した(局所一意性).つぎに、この、2つの流れ関数が一致する区間は,初期関数を上手く選ぶことにより,任意に長くとれることを示した(大域的一意性).さいごに,解の不連続点の軌跡(shock curve)の時刻無限大での漸近公式の各係数から,流れ関数の原点での高階微分係数が再構成できることを示した.以上の結果は,ヘルシンキ,および台湾台北における逆問題の国際研究集会において発表した.
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