Research Abstract |
1.弾性体が残留応力と組織異方性による非等方性をもつ場合,弾性体の表面を伝わるRayleigh波の振幅の偏りを表すpolarization vectorに,非等方性が与える影響を考察し,polarization vectorの,表面に水平な成分と表面に垂直な成分の比であるpolarization ratioに対して,非等方性の線形のオーダーまでを含む摂動公式を導出した.すなわち,等方弾性体のpolarization ratioはラーメ定数をもちいて表示されるが,非等方性を等方弾性体からの摂動とみなした場合,弾性体の表面を伝わるRayleigh波のpolarization ratioが,等方弾性体のときと比べてどう変化するかを調べたものである.このpolarization ratioの摂動公式と,非等方性によるRayleigh波の伝播速度の摂動公式とから,数種類の材質に単軸応力を加えた場合には,polarization ratioの変化率は,伝播速度の変化率の数倍であることが判明した.すなわち,polarization ratioの方が,非等方性に対するsensibilityがよいということがわかるRayleigh波のもつ情報から,弾性体の未知の非等方性を測ることは,30年以上前より研究されてきた非破壊検査における理論,実験両面での大きな逆問題であるが,上述の結果は,この逆問題に一つの方向性を示唆すると期待され,海外共同研究者のC-S.Man教授と,国際学術誌への投稿を準備している. 2.局所Dirichlet to Neumann mapから,境界での導電係数,およびその境界法線方向の導関数を,optimalなregularity条件下で再構成する問題を総括し,京都大学数理解析研究所における共同研究集会「応用逆問題の新しい展開」にて成果発表した. 3.スカラー保存則方程式において,解の不連続性(shock)から,保存則を支配する流れ関数を同定する逆問題の研究論文が,初期関数の選び方を考慮した大域的一意性の結果も含む形で,国際学術誌Invese Problemsに掲載された.
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