Research Abstract |
弾性波動方程式の解のうち,自由境界表面に振幅が集中している弾性表面波(Rayleigh波)に関して研究を行った.弾性体表面でのRayleigh波の速度を調べることで,弾性体の非等方性を測ることは,30年以上前より研究されてきた地球物理,材料力学での理論,実験両面での大きな問題である.しかし,多くの結果は弾性体の種類に固有な方法を使い,統一的なアプローチが確立されていない.本研究では,弾性体を伝わるRayleigh波の伝播速度,polarization vectorの表面に水平な成分と表面に垂直な成分の比であるpolarization ratio,およびそれらの成分間の位相変化の3つを観測できる物理量とみなし,これらの観測量に,弾性体のもつ非等方性(残留応力項を含む)の情報がどのように含まれているかを,数学解析により考察した.具体的には, 1.弾性テンソルの摂動に完全な非等方性を仮定し,Stroh formalismをもちいるsystematicな方法により,21個の非等方弾性テンソルの独立成分の中,本質的に4個のみが,3個の残留応力テンソルの独立成分の中,1個のみが,Rayleigh波の速度の一次摂動に影響することを示した.以上の結果は,平成18年7月北海道大学での逆問題の国際研究集会「Inverse Problems in Applied Sciences」において研究成果として発表し,また国際欧文誌Journal of Elasticity(2006)に掲載された. 2.上述のpolarization ratioおよび位相変化に対しても,弾性テンソルの摂動に完全な非等方性を仮定し,一次摂動に影響する非等方弾性テンソルを調べた.上記1.とあわせ,以上の結果はRayleigh波観測により非等方性を決定する逆問題に一つの方向性を示唆すると期待され,海外共同研究者のC-S.Man教授と共著の形で,国際学術誌への投稿を準備している.
|