Research Abstract |
本研究では,高分子化合物が微生物の作用によって分解する生分解,及び水道鋼管のような管路の液体の流れに発生する水撃とよばれる急激な圧力の上昇と,その反動で生じる圧力の低下によって形成される液体と気化気体の混合体の流れである気液2相流に関する問題に対して共通となる数学モデル,逆問題の解析,数値的手法の開発等数学的問題を取り扱うことを目標とした。高分子の生分解に関しては,生分解プロセスの数学モデルを提案し,実験結果を導入した解析を行い,数値シミュレーションによってモデルの妥当性を検証するという数学的な解析手法を確立させることを目標とした。気液二相流発生から消滅の過程に関しては気液二相流形成をともなう管路非定常流に対して,ボイド率が大きくなる場合も適用可能な解析法の確立も目標とした。一般に微生物の作用によるポリマー解重合は,分解がポリマー分子末端に限られ,モノマーユニットが徐徐に切断されるexogenousタイプとポリマー分子が任意の位置で切断されるendogenousタイプに大きく分けられる。従来,分解率は分子量だけに依存するものとして,exogenousタイプ解重合プロセスやendogenousタイプ解重合プロセスのモデルによる解析が行われた。一方,微生物の個体数,温度,溶存酸素等時間的に変化する要因の影響が生分解性に現れる場合,従来分子量だけに依存すると想定されていた分解率へ,時間的因子を導入することが必要となる。分解率が時間の関数と分子量の関数であるとの仮定のもとでは,変数変換により分子量だけに依存する分解率を持つモデルに帰着され,従来の解析方法によって分子量に依存する因子が求められることは,既に示されていた。また時間的因子に関する解析結果も得られていた。平成19年度は,このようなモデルが汎用モデルとして妥当なものであるか検証するため,更なる解析を行うことを目標とした。そのため実験結果を導入し,分解率を求めるため逆問題を数値的に解き,時間的因子を求め,分子量-重量分布の推移に関するシミュレーションを行なうことを目標とした。管路非定常流に関しては,乱流効果を考慮した液体流モデル,ボイド率が大きい場合も有効な気液2相流モデルおよび液体流と気液2相流のインターフェースのモデルを提案するため検討を行うことも目標とした。 Endogenousタイプ解重合プロセスに関しては,分解されたポリマー分子の重量が分解後の分布域に一様に分布する場合を想定したモデルを提案した。また分解率が時間の関数と分子量の関数であり,時間の関数が指数関数である場合を想定し,Endogenousタイプ解重合プロセスのモデルに基づくポリ乳酸の分解プロセスの解析を行った(M. Watanabe, F. Kawai, Modeling and analysis of biodegradation of xenobiotic polymers based on experimental results, Proceedings of the 8th Biennial Engineering Mathematics and Applications Conference, EMAC-2007, Editors: Geoffry N. Mercer and A. J. Roberts, ANZIAM J. 49 (EMAC-2007) pp. C457-C474, 2008.)。更に,これまで提案した分解されたポリマー分子の数が分解後の分布域に一様に分布される場合やポリマー分子の重量が分解後の分布域に一様に分布する場合のモデルを特別な場合とする一般的なモデルを提案し.前述の二つの場合と異なる例をポリ乳酸の解析に適用した(Masaji Watanabe, Fusako Kawai, Mathematical Modeling and Numerical Studay of biodegradtion of xenobiotic polymers with experimental data, 2nd Regional Conference on Ecological and Environmental Modelling (ECOMOD 2007), August 28-30, Gurney Hotel, Penang, Malaysia(口頭発表,発表年月日:2007年8月28日),submitted)。以上の結果を含む論文を執筆し,また国内,国外の研究集会で研究発表を行なった。
|