2005 Fiscal Year Annual Research Report
グラフの幾何構造とグラフ上の作用素のスペクトル構造の相関関係の解析
Project/Area Number |
16540116
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
樋口 雄介 昭和大学, 教養部, 講師 (20286842)
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Keywords | グラフ / スペクトル幾何 / ラプラシアン / 被覆構造 / 状態密度関数 |
Research Abstract |
グラフの幾何構造とそのグラフ上のラプラス作用素のスペクトルの構造の相関関係を研究するなかで,まずは昨年度から引き続き,「有限グラフMの普遍可換被覆グラフGにおけるラプラス作用素のスペクトルの特徴付け」を調べた.現在のところ得られたこととしては,「有限グラフMが2-因子を持つならば,その普遍可換被覆グラフGにおけるスペクトルには固有値が存在しない」というものである.これはd-次元格子における固有値の非存在性という事実を含むだけでないはるかに広い一般的主張となっている.ここで「2-因子を持つ」有限グラフの特徴付けは,グラフ理論において難解な問題ではあるが,正則有限グラフに限定すれば,「"偶正則",もしくは"奇正則で2部グラフ"ならば2-因子を持つ」ことが古典的な結果として知られている.一見限定的ではあるが,研究者が興味を持つ無限グラフのうち,この類いの有限グラフの無限普遍可換被覆グラフになっているものは少なくない.上記の結果を得る過程においては,スペクトルに関する解析手法である状態密度関数や被覆変換群の構造に着目し,その上でグラフの幾何に関する特徴付けを行なったが,この解析の副産物として「偶正則有限グラフが非分離2-因子を持つ」ための十分条件という,純グラフ理論的結果も得られた.また,「固有値の有無」や「Full Spectrum Property」の完全なる特徴付けへのさらなる足がかりとして,2-因子を持たない特殊な有限グラフM(m,n)に対する,その普遍可換被覆グラフのスペクトル集合の決定(固有値の有無や区間の数はm,nに依存)や状態密度関数の具体的計算なども行なった.
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